Cisaraghi

新書・忍びの者のCisaraghiのレビュー・感想・評価

新書・忍びの者(1966年製作の映画)
-
これは『ある殺し屋』の塩沢に近い雷蔵さん。塩沢に馬のしっぽをつけたような髪型で服装も現代風。苦しかった霧隠才蔵から一転、渡辺岳夫氏の音楽の助けもあり、ピリッと締まった一作だった。無理に忍びの者と冠さなくてもよかったのでは、と思うくらい。池広監督で絵も絞まってる。何より、ドラマとして面白かったし、伊藤雄之助さん、富士真奈美さん、五味竜太郎さん(矢吹の猪十)、井上昭文さん(斑夜叉丸)など、脇役の方々の面つきも絵になっていた。有終の美を飾ったと言える雷蔵さん的にも納得のいく最終作だったのでは、と書いたけど、もしかして最初から8作目で終わりと決まっていた訳ではなかったのかも?

濡れ髪シリーズに代表される明るい雷蔵さんとも、誇張したカッコよさが身上の眠狂四郎系とも違う、アイメイクほとんど無しの、無敵のスーパーヒーローじゃない、リアリスティックな雷蔵さん。第一作では忍者以前に一人の若者という印象の強かった雷蔵さんも、4年経って頬がふっくらし、すっかり大人の男性になった。正直今回20代半ばの若者の役は厳しかったけれど、大人の雷蔵さんだからこそ安田道代さんと心を通わす場面は甘過ぎなくてよかったと思う。安田道代さん、この時弱冠20歳。15歳年上の大スター雷蔵さん相手に全く引けを取らない美しく凛とした女性だった。

時代は一気に遡って、晩年の武田信玄が31歳の家康との戦いに赴くまでを描く。最初の火薬小屋を見下ろすショットにデジャヴ感あったが、確か一作目で見た?ラストは一作目に回帰。4年の歳月を最も感じさせる場面だった。これで忍びの者8作コンプリート。歴史の勉強をしてから見直すと、もっと楽しめそうなシリーズ。

66
Cisaraghi

Cisaraghi