爆裂BOX

フレイルティー/妄執の爆裂BOXのレビュー・感想・評価

フレイルティー/妄執(2001年製作の映画)
4.1
「神の手」と呼ばれる連続殺人犯を捜査するFBI捜査官ドイルの元にフェントン・ミークスと名乗る男が現れ、犯人は自分の弟アダムだという。信じないドイル捜査官に彼は子供の頃の話を聞かせ…というストーリー。
今は亡きジェームズ・キャメロン作品で知られる俳優のビル・パクストンの初監督作品となるサスペンス・スリラーです。
連続殺人事件を追うFBI捜査官の元を訪れた、犯人は自分の弟だと証言する男が語る子供時代の話が回想形式で描かれていきますが、父親と弟の三人家族の平和な日常が、ある日突然父親が神の啓示を受けたと言い始めてから静かに狂って崩壊していく様が怖いですね。夜中に部屋に来ていきなり神の啓示受けたと言い出して、翌朝はいつもと変わらないから夢だったんだと思い込もうとしてたら、学校に送ってもらって車から降りた時に欠けられる言葉は静かにゾッとします。パクストン自身が演じる父親がそれまでと変わらないように見えて言動がドンドン静かに狂っていく様もその迫真の演技と相まってリアルに感じられます。神の武器である斧で神から授かったリストに悪魔と載っている人達を拉致して殺して行ったり、いつまでも神を受け入れようとしないフェントンを地下室に閉じ込めたりするけど、同時に天使からフェントンが悪魔だと言われても頑なにそれ受け入れず、殺そうとしてもできなくて泣き崩れたり前と変わらず子供達を本当に愛している所も良いですね。フェントンがチクったせいで保安官を殺すことになった時は、初めて「人間」を殺して直後に吐いたりする所も良い。
主人公フェントンが置かれた状況も、父親こそ人殺しの悪魔で何とか凶行を止めたいけど父親の事愛してるから周りに言い出せず、弟連れて逃げたいけど弟は父親の事ヒーローとして尊敬してるから離れたがらず、子供だから自分一人ではどうすることも出来ないと絶望的で可哀想になってきます。フェントン役と弟のアダム役の子も演技上手くて見入りますね。
殺害シーンを直接描かず音だけで表現するのも本作では効果的だと思います。グロ描写ないながら、父親が子供に殺人強要したり、死体遺棄させるシーンなどからPG-12指定になってるんですね。
ドイルの前に現れたフェントンがアダムだというのは読めましたが、そこからの展開は読めませんでしたね。賛否両論あると思うけど、それまでの善悪や正義の価値観ひっくり返される様な展開は好みでした。ヒー〇〇物を客観的に見ればこんな異常な風に見えるんだぜ、と深読みもできそう。
マシュー・マコノヒーが若いですが、最初の方と最後でガラリと印象が変わって見えるのは流石。
あまり知られていない隠れた名作という感じで、初監督のパクストンの手堅い演出もあって楽しめた作品です。