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マホルカ=ムフ
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『マホルカ=ムフ』に投稿された感想・評価

無自覚な階級意識と無分別。
ジャン=マリー・ストローブ&ダニエル・ユイレ。
彼と彼女のデビュー作となる。
戦後西ドイツの冷戦構造の中で、未だ特権階級意識を持ち、数字と属性でしか人を見られない男の姿を通し、戦前の体制を維持する社会構造と権力に阿る教会とを痛烈に皮肉した作品である。
原作はハインリヒ・ベル。

本作の主人公、マホルカ・ムフは旧貴族階級の出身であり、無自覚に特権意識を持ちながら民主主義者を標榜する厚顔無恥な元ナチス軍人である。
滑稽味を持って描かれているが、その実独善的なナルシストであり、権威に酔い痴れる様は見ていて痛々しくも腹立たしい。

また作中に於いて何より醜いのは、権力に阿り、その教えすら歪ませて見せる教会の姿である。
それは国防軍創設に当たり、“正義の殺人は許される”や“イエスは兵を禁じていない”とする新聞の論調や、再婚をほぼ認めない教義にも関わらず“これまでの婚礼を教会で行っていないので、(今回初婚として)式を教会で行える”とする司祭の姿に現れる。

残念ながらこの様な人物、曲学阿世なメディアの論調は、現今の我が国でも多く見られる。
作中最後では、同じく特権意識を持つ新妻が、『大丈夫、誰も私達には逆らえないわ』と宣うが、これも政治・社会の問題からは目を背け、安逸な生活、娯楽を求める我々へストレートに刺さる。

この時期、必見の作であろう。
ふつう。やや弱い。


◆製作の背景◆
ナチスへの反感を抱きつつも全体主義体制下で六年間にわたって従軍させられ、戦後は “廃墟文学” と呼ばれる敗戦直視の文学活動を果敢に開始したハインリヒ・ベル。1956年に西ドイツは、キリスト教民主同盟のアデナゥアー政府が推進した「一般兵役義務法」により、野党の反対を押し切って再軍備&徴兵制復活決定。翌57年にベルが発表した小品『首都日誌』は、軍国臭を未だプンプンと放つ高級軍人がヌケヌケとうまい空気を吸う内容。これが原作だ。
小説としては摑みも大きな山場もなく、日記型の一人称を作者があまり使いこなせていないために枚数相応に地味であっけないが、プンプンヌケヌケな語りそのものに冷静な風刺が効いており、各人物の台詞のブラックな阿呆らしさが(きっと当時の西ドイツの)現実に切り込んでて「やれやれ」という暗い呆れ笑いを呼ぶ。“ナチスが強制的にやったことを、戦後は民主主義の名の下にやるのか。しかもキリスト教主導で。恐ろしい。アーメン” という著者のさざめきを聴きましょう!
そのドイツとの国境付近で否応なくドイツ語ペラペラに育ったフランス人のジャン=マリー・ストローブは、58年にアルジェリア戦争に異議を唱えて徴兵忌避し、映画仲間である恋人ダニエル・ユイレとともに元敵国である西ドイツへ亡命。フランスの軍法会議にかけられて有罪となるなどバタバタしたが、62年にベルのそれ──『首都日誌』を初監督作として撮る。あっけない小品(それでいて印象的な場面や台詞がいろいろあり)の映画化だから、やりやすかったにちがいない。

◆原作との相違点◆
① 主人公マホルカの恋人インは原作ではしばらく書き進めてから登場させるが、映画ではいきなりインが姿をさらす。全体としてインの取り扱いが多い。ユイレじゃなくストローブ主導の、いかにも男性的発案。とにかく女を描いておこう、そうすりゃポップだ、と思ったわけだ。「七回離婚した女」にはとても見えない三十路ぐらいの普通すぎる女優の起用は、映像の説得力をあまり高めていない。もっと貫祿たっぷりに、もっと妖艶にしないと。ついでにいえばマホルカ役も、「七回負傷した」と豪語できるほどの戦場経験(部下たちを処刑までした)を持つ元大佐にはあまり見えずビジネスマン風すぎる。当時ド素人だったユイレ&ストローブだったわけだからプロデュース力は当然足りない。
② 原作では銅像が「夢の中で」「すべてマホルカ自身(の動く像)だった」が、映画では「空想として」「銅像じゃなく、すべて生身のマホルカ自身」。要するにブロンズ像や石像を用意する力がなく夢路っぽいシュールさを出す余裕もなかったからそうしただけなのだが、サッサと進む歯切れよい短篇映画としてはわりと奏効してる。へたに像を造るよりも。
③ 原作の重要台詞は映画中にもほぼ網羅されてるが、唯一、「軍事回想アカデミーを建て、その特別棟には若い娘たちを慰安婦(泡姫)として雇い住まわせる」と語られる原作の超ふざけた案は映画では全削除されてる。全削除の扱いを受けたのはこの点だけだ。あまりにも恥部だから省くべし、とユイレもストローブも一致したにちがいないけれど、逆に、そういう恥部こそが風刺小説の真骨頂だったわけだから、「綺麗にすんなよ」と私はちょっと思った。
④ 云うまでもないが、日記は一人称(マホルカ視点・マホルカ思考が基準)、この映画はモノローグナレーション部分以外は三人称(私たち外野が外側から眺めるもの)。阿呆ブラックな日記思考をどう受け止めるか原作は可笑しみと嫌悪感と恐怖の自由を私たちに与えてくれたが、この映画は単に「ひどいよね。あなたも不穏な気分になるでしょ」の煽りを業務にしてる。劇伴ふくめて。想像も解釈も広がりにくい。つくづく映像は私たちの空想力を育まないなぁ。
⑤ ラストのインの台詞は、原作ではマホルカの腕に手をかけて、おそらく気持ち的にマホルカにじかに向き合う(見つめる)感じで言うが、映画では紅茶を注ぎながらマホルカを見もせずによそよそしいぐらいサラッと吐く。これで終わる。あっけない原作以上に、あっけない。紅茶を注ぐ場面は原作では別の部分にある。ユイレ&ストローブの “コラージュ癖” が処女作からこうして暴走し始めてる。コラージュよりも本当はオリジナルが観たいぞよ。

❻ <原作にはない、この映画の価値>
62年当時の首都ボンの風景(何か高度成長期前の東京の北千住とか浅草っぽい??)を映像で記録したことになる。しかも当時の新聞(の見出しや文面)を次々と見せつけてくれたので、全体としてジャーナリスティックな意味が生じた。何とでも書ける架空小説と違って、ロケ映画には視覚的歴史記録という副次的な価値があるわけだ。
ただし、撮影は、面白みが無。めったに動かず、動く時は整然と硬い。人間味が無。ロボットのように。あの時代、中部ヨーロッパの気分は硬かったのか。

[アテネフランセ  ところで、映画を待つあいまに建物外の「女坂」を久々に下りてみた。足がもつれたらコロンコロンと人生終わりかねない急階段だ。まず13段下りて中折れて27段下りてまた中折れて42段。女の人生は計82段で終わるのだろうか。黄泉の世界かもしれない最下段から、悔しいので元気一杯最上段まで登った。こうして私は今日もまた生まれ直した。現在、零才だ。そのすぐ東に「男坂」というのを眺めに行った。「男坂」は中折れなしの一直線で、34+30、計64段のようだ。男性の寿命は64才ということなのだろう。太く短く生きてくれればそれでいいかもしれない。ギター屋の林立する街で、ロックな私は人生というものを想ったのだった。 おわり]
実に中学以来のストローブ=ユイレ。原作エアプだけど映画自体が長編からの抜粋みたいで、本を斜め読みしてるような背徳感もある。

プロットは戦後ドイツにてナチス解体直後から既に冷戦に向け、兵力の再軍備をキリスト教が後ろ盾となって行っている時制批判。主人公マホルカは大戦の英雄であり、自身の銅像に囲まれてニヤつく夢を見るような高慢な人物設計は凄く物語映画っぽい。
軍服を巡る三人の唐突な視線の切り返し、その異様な速度に戦慄

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