みおこし

ブラック・エースのみおこしのレビュー・感想・評価

ブラック・エース(1971年製作の映画)
3.7
世界には星の数ほど素敵な役者さんがいるけれど、My四天王はジャック・レモン、ロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソン、そしてジーン・ハックマン。こちらの渋いおじさま達の演技にはいつも圧倒されるし、作品ごとに違う表情を見せてくれて改めて私の中で不動だなと痛感する今日この頃。ということで、今回はハックマン様が冷酷な悪役に扮した発掘良品を鑑賞。

カンザスシティの暗黒街を仕切る顔役メリー・アン。彼の元に送り込まれた借金の取り立て人が返り討ちに遭い、無惨な殺され方をしたことからシカゴの巨大組織が激怒。メリー・アン抹殺の指示を受けた一匹狼のデヴリンはカンザスシティに単身乗り込むのだが、そこは想像を超えた無法地帯と化していた...。

食肉工場の製造工程が突然流れる謎のオープニングから「キテるぞ...笑」と感じていたのですが、蓋を開けたら70年代のアメリカの混沌やら狂気やらがギュッと詰め込まれた、硬派なハードボイルド作品で最高でした。
人身売買、麻薬密輸などでボロ儲けし、背筋も凍る方法(ネタバレになるから書けない)で邪魔者を消していく極悪人メリー・アンを演じたのがハックマン。一見気前が良さそうなのに、何のためらいもなく人を殺していく姿が逆にサイコパス感を煽るのでコワすぎる...。
そんな彼に立ち向かうデヴリンを演じたのは、まさに孤高のタフガイ役がぴったりなリー・マーヴィン。敵を容赦なく消していく一方で、誰よりも正義感にあふれ弱者を見捨てておけない...というキャラ設定も王道だけどとっても素敵。人身売買された少女(デビュー間もないシシー・スペイセク)との淡い恋模様は『レオン』を彷彿とさせて、全編通して緊張感と男臭さが漂う映画の中に一味違うエッセンスが加わっていてまた良かったです。

淡々と話が進んでいくから決してテンポが良いとは言えないし、ストーリーも先が読めてしまうんだけれども、とにかく当時のアメリカの息遣いが伝わってくる、どこかチープな映像やアクションがかえって本作の魅力を倍増。ストーリー進行上そんなに要らなかった気がするメリー・アンとウィーニーの兄弟喧嘩のシーンが何だかんだで一番好き(笑)。
ちなみに音楽は巨匠ラロ・シフリンによるもの。これもまたレトロで最高〜〜!!

かつては常に"健全さ"と"品位"を求め続けたハリウッドですが、それからたった10〜15年でここまでストレートに人間の残酷さや腹黒さを描いた作品を量産するようになるとはやはり興味深い。まさにそんなアメリカ映画史の転換期に作られた1本ということで、大変興味深い作品でした。
『フレンチ・コネクション』『ダーティ・ハリー』などお好きな方はツボかなと!
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