半兵衛

クレージーだよ奇想天外の半兵衛のレビュー・感想・評価

クレージーだよ奇想天外(1966年製作の映画)
4.0
谷啓という平凡そうな顔立ちと体型、それでいて不思議な存在感(実際結構な変人だったらしい)という相反する二つの要素を持つ俳優の魅力が存分に活かされた佳作。そしてクレージー映画らしく、ドタバタ的なコメディも充実していて喜劇としても面白い。素朴な超能力の描きかたも作品の雰囲気とハマっている。

あと谷啓演じる宇宙人の廻りの人物描写をリアルにすることで、全体の世界観のバランスを均等に保ちSFとしてもサラリーマンものとしても荒唐無稽に陥らない構成が○。こういう娯楽映画としては珍しい堕ちてしまったどこかシニカルな星由里子のヒロインや、谷啓に惚れているしっかり者で地に足をつけて生きる野川由美子、社会に生息する中年男性の醜さと中間管理職の苦しみを体現するハナ肇、いかにも芸能界にいそうなチンピラあがりの歌手・内田裕也…。そして宇宙人の目を通して日本人という生き物の生態がシニカルに描かれている点も注目、特に後半の谷啓扮する鈴木太郎が政治の世界に入る展開を通して日本独自の政治システムが分かりやすく解説されており必見(こういう点が未だに変化していないのが凄い)。

地球平和のために派遣されたものの、星由里子に惚れてしまい地球人として生きる羽目になった谷啓が苦い結末を迎えたのに、涙を拭いてミュージカルシーンを披露する(歌詞がまた…)エンディングは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』より泣けた。

ちなみに自衛隊入隊研修の件があるが、サイトを開いて今もやっていると知ってびっくり。体験していない私は純粋に笑えたが、こういうのをやっている人にとって谷啓の姿は切実に共感できるのかも。
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