半兵衛

ひき逃げファミリーの半兵衛のレビュー・感想・評価

ひき逃げファミリー(1992年製作の映画)
4.0
ひき逃げをきっかけにバラバラだった一家が団結するまでを描いたブラックコメディで、題材はめっちゃ不謹慎なのに団結してひき逃げした車を解体していく家族の姿に胸が熱くなる。

そして人が死んでるのにクスクス笑える描写が幾つかあって見ていて楽しい、水谷監督の作品ははじめて鑑賞したがユーモアとサスペンスの配分が見事でコメディとしても家族ドラマとしてもサスペンスとしても成立しているところが凄い。

事故をきっかけに家族を引っ張る存在になる母親役の中尾ミエ、自首しようかどうしようか悩むうちにかまいたちの山内並に挙動不審のサイコパス化していく父親役の長塚京三ともに見事な熱演を見せる。でもそれ以上にボケ老人のお爺ちゃんの仲谷昇の飄々としたコミカルな演技が素晴らしい、ここまで光輝く仲谷昇を見たのははじめてかも。あと登校拒否の息子と社会人の娘(ちはる凄い懐かしい!)の二人の子役の演技も○。

あとこの映画は脇役がとんでもないくらい充実していて、大杉漣や岩松了、大高洋夫にちょい役で麿赤児や下元史朗、光石研が出てきたりする。特に主人公一家の行状に疑問を持ち干渉する隣家のおばさんを怪演する大島蓉子、何で彼女に助演女優賞が授与されなかったのか疑問に思うほどエクセレントな演技をこの映画で披露している。個人的には『最も危険な遊戯』の松田優作ばりに車を追いかけるシーンが最高に笑えた。

ひき逃げで警察に捕まるのかと思いきやそこから一捻りする後半の展開も見事で、そこからラストのそれまでの緊迫感を吹っ飛ばすようなオチもアナーキーで愉快。そして登校拒否の息子が飼っていた瓶に閉じ込められたは虫類が放たれる様が何かから解放された家族の自由な姿につながるエンディングの演出の巧みさに感激。
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