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百合子、ダスヴィダーニヤのBaadのレビュー・感想・評価

百合子、ダスヴィダーニヤ(2011年製作の映画)
3.2
力作だが、何かが足りない、という感じの映画でした。

尾崎翠のような、オタクっぽい仏教的な世界はとても上手く撮れていたのに、恋愛ものは今一つというのはちょっと意外でした。一つ一つのシーンは丁寧に撮れているのに、全体の熱気みたいなものが感じられなからピンと来なかったのかもしれない。

役者さん達も、荒木役の大杉さんが若干イメージが違うという以外は好演だったのに。(ちなみに、荒木のイメージには、昨年「こほろぎ嬢」上映時にトークに出ていらした脚本家の山崎さんが上手くハマりそうだと思いました。)「こほろぎ嬢」の、<豚の目から見た世界>みたいな映画の核になるようなハイライトが一つ欲しかった所。

荒木、百合子、芳子と等分に目配りしているけれど、荒木か芳子のどちらかをきっちりと主人公に据えて、その視線から徹底して物語を構成したら面白くなりそうな気がしました。本来の主人公は湯浅芳子のはずですが、その辺がすごく判りにくかった。

昭和初期のアンティークの着物がふんだんに出て来て、着こなしも工夫されているので、着物に趣味がある方は必見です。
(2011/10/15記)

物足りなさの理由に思い当たりました。
(2011/11/11)

十代になったばかりのころ、吉屋信子の少女小説を一冊読んだ事があります。
戦前の女学校での友人関係を描いたものでした。その小説での少女同士の感情のやり取りの繊細さときわどさとスリリングさは素晴らしいもので、内容は忘れても印象だけは未だ残っていた様です。

それと比べて、随分と薄味に感じたのかもしれません。

物語の流れと二人の佇まいからすると、最初に恋心を抱いたのは中条百合子のはずです。その思いが通じた時の高揚感や幸福感が画面からあまり伝わってこず、その部分はセリフ主体で描いているのに、そのわりにセックス・シーンだけがきっちり描かれている事に違和感を感じました。
荒木と百合子の関係に関しても同じような事を感じました。
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