Jonayama

フェーズ6のJonayamaのレビュー・感想・評価

フェーズ6(2009年製作の映画)
4.3
アメリカ産のいわゆるポストアポカリプス映画。
ドラマ『ウォーキング・デッド』シリーズが始まる前年に公開された作品だが(2007年には出来上がっていたらしい)、あのテイストに近いハードな終末後の世界を生き抜こうとあがく兄弟のストーリーが展開されていく。

感染すれば死は免れない恐ろしいウィルスが世界中に蔓延し多くの犠牲者が出ているアメリカが舞台。
兄弟であるブライアンとダニーはブライアンの恋人ボビーとダニーの友人ケイトを連れてフロリダ州のタートルビーチにある子ども時代遊びに行った別荘で隔離生活を送るべく車を走らせる。
滅びゆく世界の中、生き残るためルールを決め進んでいくが道中様々な困難が彼らを襲い冷酷な決断を迫られる。


人気俳優クリス・パインも出演する2009年公開の映画だが今日までまったく存じ上げずポストアポカリプス系映画は大好きなのであらすじに惹かれてなんとなく観始めたが思わぬ大当たり!!
崩壊した世界でジリジリと後がなくなっていく焦燥感や感染の脅威に怯える様子、本来そこそこ善良な者たちが生き残るために非情な手段を選ばざるを得ない葛藤がうまく表現されており観ていて胸が痛くなる…

低予算映画で物語も終始男女4人にスポットを当てるスタイルなので作中起きている事態に対してかなりこじんまりとした作りの作品だが個人的にはカット割にかなりの工夫が感じられ冒頭の逆さまに道路が映るシーンや中盤鏡越しに互いを移すブライアンとボビーの会話シーンなど印象的なシーンが多く最後まで目が離せなかった。


文明が崩壊した世界を描いているが本作はいわゆるゾンビモノではないため感染者に襲われる類の作品ではない(一応、ゾンビを思わせるような皮膚が激しく爛れた感染者も出てはくるが)。なのでゾンビとの戦いを期待すると大きな肩透かしを喰らうが、滅びゆく世界であらゆるものを犠牲にしヒューマニズムや時に愛すらも捨て死に物狂いで生き延びようとする若者たちの過酷なロードムービーとしては十分な見どころを持った作品だと思う。とても満足のいく映画だった。

ド派手なシーンは無くほぼ全体的に陰鬱、状況的に退廃的な未来しか予想できないハッピーエンドとは言い難い結末や人文主義に反するような胸糞悪い展開が何度もあるため多くの人に勧められるような作品ではないがポストアポカリプス系作品が好きな方には刺さる作品だと思う…と思ったら評価を見るとそうでもないのね(苦笑)

クリス・パインとクリストファー・メローニの演技も良かった!




そしてコロナ禍の現在にも通づるようなマスク着用、非接触、入念なアルコール消毒をする描写にハッとさせられる。
まさか10数年後にホントにこういうことをすることになるとはね…もちろんここまでヤバいウィルスではないが
Jonayama

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