NHKスペシャル「戦後ゼロ年 東京ブラックホール」は、大変衝撃的な映像と内容であった。この映画では丁度、朝鮮戦争の戦後ゼロ年といったところであろう。ところがNHKスペシャルと比べるとまったく戦後のような雰囲気がない。ソウルは朝鮮軍によって一度は占領されたはずだが荒廃した雰囲気がまったく足りない。無政府状態で弱肉強食の世界ではあるが日本のそれと比べるとやたらと暴力的で荒々しい。したがって誰にも感情移入することはなかった。北方謙三原作となるともっと男の胸の内を表現してもよさそうだがそうした描写もない。日本の戦後、たとえば「この世界の片隅に」や「火垂るの墓」のような雰囲気は一切なし。結果とてもつまらない話であった。
