Pinch

真夜中のカーボーイのPinchのレビュー・感想・評価

真夜中のカーボーイ(1969年製作の映画)
4.6
一見幸せそうでも、孤独で悲惨でも、平々凡々でも、死ぬときは皆同じなんだ。結局のところ、大抵は何が何だか分からないまま無意味に人生を終えていないか。リコは、最後に一緒に笑ってくれるジョーがいて幸せだった。その意味では、ロマンチックな映画と言えるのかもしれない。今だったらおそらくジョーはいないだろうから。

ダスティン・ホフマンの天才的な演技によって、リコは小さな子供のように善悪の区別がつかず、あさましく、不器用で、惨めで、あどけなく、憎めない可愛らしさを持つ。そのような人間性が社会、世間に徹底的に叩き潰される実態、今も昔も変わることのない現実がここにある。

バスの中でリコをのぞき見る野次馬たちはアメリカの典型的な大衆。彼らの圧力によって、ジョーが象徴する無骨なアメリカの良心は揺らぐのみ。どうすべきかについて何も示唆せず、現実を露わにすることによって視聴者の心と行動に変革をもたらそうとする、アメリカン・ニューシネマの傑作。
Pinch

Pinch