Jeffrey

泉のJeffreyのレビュー・感想・評価

(1956年製作の映画)
3.0
「泉」

冒頭、浅間山麓の曽根集落。水源地問題、土地の人々、植物学者、土建会社、投資、別荘で猟銃自殺、法外な給料、社長、秘書、九州の博物館。今、人の複雑な内面と対立がを映す…本作は故岸田国士が昭和十四年に発表した小説を松山善三が脚色し小林正樹が五十六年に監督した社会派恋愛ドラマで、この度初DVD化され初見したが傑作。水源地問題の中にメロドラマの要素を入れた社会派ラブストーリーと言う所だろう。社会問題とメロドラマを巧みに融合させた、構造的にユニークな演出をしており、農村と資本側の対立を男女の絡み合わせで描写していく。

さて、物語は水源地問題で諍いが続く浅間山麓の曽根集落。植物学者の幾島は、その地を訪れた際に土建会社に投資している立花の秘書、素子に心を惹かれたが、なかなか本意を見出せない。そんなある夜、立花が別荘で猟銃自殺をしてしまう。素子は土建会社社長、田沢の秘書となる。そして、幾島は彼女から逃れるように紀州の博物館に就職する。


本作は冒頭から魅力的である。大自然の山の中を猟銃を持って犬と共に走る麦わら帽子をかぶった男の描写から始まる。その森の中に一人女性がいる。男は危ないと言い、土砂崩れ危機一髪のところを助けてあげる。ここは曽根集落と言う所である。続いて、村の農村と対立している事務所の人間との話へと変わる。この村には妨害により水が出なくなってしまっている。 土建会社に投資している立花の所へ一人の男性がやってくる。彼の名は磯島暁太郎。

そこでは立花の秘書である斉木素子と言う女性が出迎える。 二人は会話、カットは変わり、博物館で磯島と斉木の二人が立ち話をしている。そして、男は彼女に半ばプロポーズ的なことを言う。そして2二人は少しばかり喧嘩をし別れる。続いて、集落の小さな古民家で寒さを耐えしのいでいる磯島とその他村の青年ら。そうした中、村での対立が徐々に始まっていく…と簡単にオープニングを説明するとこんな感じで、中々面白かった。



いゃ〜この作品はラストまでとにかく淡々と物語がひとつづつ展開を見せて進むのだが、タイトルの泉と言うのが納得いくクライマックスの感動的なシークエンスを非常に良い。モノクロ映像ながらに虹がかかっている場面もよくわかるし、あの村人の軍団が走るショットの良いような演出は音楽と共にあって素晴らしい。それに主人公のヒロインとのラブストーリーの行方も同時に見れていけるのでひとつで二つの映画を見たかのような気分になる。

有馬の魔性な感じが伝わる風変わりな映画でもあった。
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