菩薩

ロケーションの菩薩のレビュー・感想・評価

ロケーション(1984年製作の映画)
4.6
強力な虚構が脆弱な現実を塗り替えていく様、美保純の爆走に必死に食らいついていく撮影クルー、彼等が彼女に追い付いた時、その物語は終焉を迎え、美しき鎮魂の火が灯される。その火は死んでいった者に対する鎮魂でもあり、後にお蔵になるフィルムにも捧げられてもいるのだろう、この時点で既に運命は決まっていたのか。映画製作者の狂気的側面を自虐的に描いた作品でもあるだろうが、なにより映画が生き物である事の証明であり、映画とは人生であるとの証明でもあるのだろう。死体として登場した少女は映画により命を吹き込まれ、自らの死んでいた人生を振り返り、新たな人生を走り生き始める。撮りたいもの・観せたいもの・観たいものが一致しなくとも、今日も今日とて映画は生まれ、世の中に送り出されていく。彼等の狂気を生き延びる道を教えよ、そして我らに狂気を生き延びる術を与えよ。目を開け、レンズを向けろ、カメラは絶対に止めるな、フィルムは巻き戻せても、我等の人生はただ前に進むしかない、ただ今日のところは疲れたので眠る。呪われた人生、呪われた映画の誕生秘話、暗幕一枚のアメリカの夜。
菩薩

菩薩