てふ

戦争と人間 第三部 完結篇のてふのレビュー・感想・評価

戦争と人間 第三部 完結篇(1973年製作の映画)
5.0
新文芸坐 反戦・反核映画祭

3日間通って観た価値のある作品だった。9時間24分にも及ぶ物語には、新興財閥の伍代家を中心に左翼運動家から満州人や朝鮮人に至るまで数えきれないほど多くの人が登場し、それぞれにドラマがある。映画は中心となって描かれる人物がいるものだが、この作品では国家指導者から社会の末端の人々にまで広くスポットライトを当てることで、あの時代をより多角的な視点で描けている。そのように物語を構築できたのは見事だと思う。

山本薩男監督のようなバリバリの左翼が、日本の帝国主義を批判的に描くこのような超大作を作ることは今では無理だろう。本来は敗戦後の財閥解体によって伍代財閥が解体されていくまでを描く壮大な構想だったらしいが、ノモンハン事件まででなく太平洋戦争も含めて完成していたらどのような傑作になっていたのだろうと思う。
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