まりぃくりすてぃ

M/OTHERのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

M/OTHER(1999年製作の映画)
4.0
一見、成功作だが、、実験性の結果が最終的には芳しくない。

勘どころに赤色ばかり使う諏訪監督にしては珍しく、平凡な色彩。
異様だったのは、電灯つけずの室内撮りの多さ。この(ひたすらな)暗さに何の必然性があるのか……を納得させてくんない場面ばかりで、疲れはしないけど時々不愉快だった。技のための技だね? 自信がないから表情をしょっちゅう隠すの?

中だるみはなかった。“中だるまず”が延々とあった。147分もの作品だから、こういう変な褒め方をしておこうね。 
台本なしで、演出意欲旺盛監督と主演カップルの三人合議制でダイナミックに展開を決めていったって? 途中まではその手法が大成功してたっぽかった。子役にも惹きつけられつづけたよ。
だけど、、、、、、、、終盤に破綻してんじゃん。
「(結婚から、俺から、質問から)逃げるな」に辿り着いたのはいいけど、そこより先へ進まなかった三浦友和さんは、渡辺真起子さんが(発達障害者級の)逆ギレ専門キャラに成り下がるのを許しちゃった。以後、終盤数十分は醜い映画だった。
「自分の幸せよりも相手の幸せを第一に考えるのが愛でしょ? 結婚するしないは自由だけど、あなたはね、自分の人生や生活のために相手を役立てたいだけのように見える。自分しか見えず自分しか愛さない人は、幸せになれないよ」と渡辺さんに好アドバイスするのは女友達の役目のはず。単に子供を連れて料理持ってくるだけの素敵な友はこの映画にじつは要らなかったんだよ。
渡辺さんがどこにも向かわないラストシーンは、特にだらしなかった。もちろん彼女だけのせいじゃない。
余計な子供がいなくなっても「元の二人」に戻れないと彼女が言い張ったのは、「相手への思いやりをもたず恋に燃えてもおらず我が強く結婚するつもりも当分ないのに同居を続けてきた自業自得なあやふや生活」が、子供の闖入によって初めてぐらついたから。ぐらついたままだから。ただそれだけであって、ほかに本質的理由はないはずよ。相手を責めるとか、責め合うとかは、違うと思う。
心情の話を生き方話にちゃんと転化していく意志欠如、の合議制流動性を楽しむよりも、やっぱ、長篇の場合はストーリーというものはきちんと用意された方がいい。長篇の場合は、だよ。まずは完璧に最高の梗概を書いてみた上で、撮影段階でどんどんどんどん崩して笑いましょう。