スギノイチ

女の一生のスギノイチのレビュー・感想・評価

女の一生(1967年製作の映画)
3.5
栗塚旭が人類全ての女性の敵とも言えるスケコマシぶりを発揮していく。
岩下志麻とデキたそばから、厭らしい目で左幸子を視姦するシーンからして人格を暗示している。
案の定、あっという間に左幸子を孕ませる。それを知った岩下志麻は苦悩し、やがて仮面夫婦となる。
そこに傘をクルクルさせて登場する女性がよりによって小川由美子。次の瞬間に浮気成立である。
ここまでくると痛快だ。
中盤で壮絶にブチ殺されてしまうが、思わず「ざまみろカス!」と声に出してしまった。

栗塚旭の遺した1人息子を田村正和が演じる。父親の愚劣さをきっちり受け継いだバカ息子だ。
ここでの田村正和の現代っ子描写の色褪せなさ。現在でもその辺にいそうな若者像だ。
岩下志麻と田村正和はお互いに愛情を持て余し、潰し合いながら人生を浪費していく。

陰鬱とした展開にへこたれそうになるが、左幸子が再登場すると映画に希望が見えてくる。
溌剌としたお嬢様だった岩下志麻は未成熟のまま年老いているのに対し、どこかいじけたような女中だった左幸子は明るい母親になっていた。
バカ息子に人生を潰された岩下志麻と、犯されて産んだ息子と幸せに暮らしている左幸子。
対照的な2人の語らう映像は、幸せと哀れが混在する万感の画だ。
「人生なんて、思ったより良いもんでも悪いもんでもねえ」という台詞に救われるなあ。
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