まさなつ

天安門、恋人たちのまさなつのレビュー・感想・評価

天安門、恋人たち(2006年製作の映画)
4.0
ロウ・イエ監督、やっぱり刺激的やな!

この作品が、天安門事件に触れていることや性愛描写が過激という理由で、監督は5年間の映画製作、上映禁止処分を受けたいわくつきの作品。 でも、とても真っ当な作品と思います。

80年代後半、地方から北京の大学へ入学したユー・ホン。そこで、ひとりの男子学生と恋に落ちます。そこから10年ほどの彼女の愛の彷徨いが描かれます。ここで描かれる大学生活は日本とも大きくは違わないのに驚きました。

恋人と一緒にいても、言葉を交わしても、抱き合っても、彼女の孤独は孤独。満たされることなく、彷徨いは続く。

背景として天安門事件がさらっと描かれますが、政治色はあまり濃くありません。その間には、ベルリンの壁の崩壊、冷戦の終結、ペレストロイカ、香港返還、、など世界も大きく変化した出来事がたくさんありました。そういう激動期に時代の変化に取り残されたような人々の愛と孤独。切ないですが、結構、心揺さぶられます。

この映画は18禁なので、そういうシーンが結構出てきます。手持ちカメラの揺れや明るさを落とした照明による映像は生々しい。でも、エロより痛みを感じます。

ユー・ホンを演じる女優さんが、中々いいです。奔放で激情的でいて、実は繊細で不安定という複雑な役を魅力的に演じています。
まさなつ

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