CHEBUNBUN

お受験のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

お受験(1999年製作の映画)
4.0
【矢沢永吉主演の異色作】
動画版▼
https://www.youtube.com/watch?v=QGX0vmImfz0

Amazon Prime Videoでは日本映画が充実している。漁っていたら、なんと矢沢永吉主演作『お受験』を見つけた。監督は『おくりびと』の滝田洋二郎。意外なマリアージュなので観てみたら、これが面白かった。

矢沢永吉といえば、カリスマ性ギラついているロック歌手のイメージが強い。本作はそのイメージを微妙にズラしているのだが、これが大胆な風刺劇に反して繊細であった。彼は食品メーカーで働くサラリーマン役。仕事をしつつも実業団マラソンランナーとして自信たっぷりに生きていた。ただ、そこからは既に「陽キャラである程度仕事はできるが、役員候補にはならないだろう。」といった空気感が流れている。というのも、彼は家事育児を妻に任せっぱなしにしているのだが、その妻の暴走に対して口出しもできなければ、寄り添うこともできていないのだ。

例えば、仲間を家に連れ込む場面。娘がちゃんと挨拶できないことにブチギレ、妻はビンタをぶちかます。娘は、ロボットのように死んだ目で高度な構文を語る。異様な光景なのに、矢沢永吉は気まずい顔をしながらスルーするのだ。

意外と意見を言ったり議論ができない人物であることが分かる。なので、出向も明らかにハメられているし、嫌な空気が漂っているのにホイホイ乗ってしまい、失業してしまう。これによりただの哀愁漂うおじさんに成り下がるのだが、ここではライブでギラつかせる「矢沢永吉」としてのオーラは消失している。このように空気感を作っていった結果、終盤のマラソンシーンが熱い。このシーン自体はある意味ビックリ展開なのだが『フレンチ・コネクション2』さながらの熱量を持っている。

肩書きを失った状態なので、知り合いに塩対応されるも、狼狽えることなく走る。ライバルもいる。脳裏にはある葛藤がこびりついている。長い道中の中で決断し、壮絶な道を走り出すのだ。この場面は何度も観たくなった。

Amazon Prime Videoの日本映画は掘り甲斐があるなと思ったのであった。
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