くりふ

シュヴァルツェヴァルト氏とエドガル氏の最後のトリックのくりふのレビュー・感想・評価

3.0
【ハンプティ・ダンプティの奇術喧嘩】

シュヴァちゃんの映画デビュー作。2人のマジシャン?が技自慢を始めるが、バトルの向かう先はおかしな方向へ…。

いま見ると驚きや独自性はなく、賞味期限切れにも感じますが、シュヴァの基本が既に揃っている。特に“対話の不可能性”はこの後、何度も繰り返されるテーマですね。

一番の特徴は、最大の武器であるストップモーション・アニメを殆ど使っていないこと。が、バトルが狂い出す場面では、それがしっかり効いている。制作の経緯は知りませんが、作る途上でアニメの力に気づいたんじゃなかろうか?

このバトルは正直、生舞台で見た方が面白いと思う。特にシュヴァちゃんは、投写映像と組み合わせた演劇を見せる、ラテルナ・マギカという舞台集団で仕事をしていたのだから、可能だったはず。

生舞台から映画に移行する途上で、良くも悪くも試行錯誤がそのまま現れた作品では?という気がします。

人間もどきがカラクリに翻弄される、という処もシュヴァの基本で、全体主義への鬱屈が、そこに顕れているように思います。

シュヴァちゃんの原材料を知る映画としては、貴重ではないでしょうか。

<2023.12.15記>
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