カラン

BULLY ブリーのカランのレビュー・感想・評価

BULLY ブリー(2002年製作の映画)
4.0
フロリダの高校生くらいの子たちの話。マウント取りたがるいじめ野郎に立ち上がるのが、根っからの虐められっ子くんや、やりまんちゃんや、麻薬中毒くんとか、身体が大きいだけの小心者くんたちなので、ぜんぜん復讐が上手くいかなさそうで、多少はらはらする。

とにかくセックスしてる。次にドラッグ。そしてのらくら。ラリー・クラークらしさは全開なのだが、『KIDS』(1995)ほどには、臨場感がない。『KIDS』は、若者たちの無軌道さを追いかけるドキュメンタリー的な体裁だったので、映画がどこに流れていくのかは説明されず、ただ若者たちの素行を見させられる生々しさが、最初からラスト付近まで充溢していたのであった。テロス不在の語りこそが生々しい記録を生み出していた。逆に本作『ブリー』では、殺人と隠蔽工作というテロスがごく普通の映画に変えてしまっており、生々しい臨場感が薄い。

撮影中、太った男性の出演者がセックス中毒の女性出演者に体型をなじられたりいじめを受けたらしい。多かれ少なかれ本作で描かれているようなライフスタイルを実際に送っている出演者たちなのだろう。しかし、立ちながら輪を作って、タバコを吸っている出演者たちにしっかり場面の心理を説明しているラリー・クラークの姿を製作風景のビデオに確認できる。

役名を付けて実際には行わない行動をまるで永遠と続けられてきた風習であるかのように映した「ドキュメンタリー」である『極北の怪異/極北のナヌーク』を撮ったロバート・フラハティのことを思い出した。ラリー・クラークは素行不良の少年少女を集めただけではない。映画のための演出をしている。それであのセックスシーンである。大した「フロリダの怪異」ぶりである。ハーモニー・コリンもそうだが、彼らは演者の誘惑者なのであり、それこそが監督としての彼らが独自に持っている特性なのだ。フィクションを悪夢のドキュメンタリーに変えるほどの誘惑者。本作は実話をもとにしている。実話を超える生々しさとなるほどの誘惑なのだろう。


レンタルDVD。画質は悪い。5.1chの音質もいまいち。55円宅配GEO、20分の9。
カラン

カラン