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台北カフェ・ストーリーのakrutmのレビュー・感想・評価

台北カフェ・ストーリー(2010年製作の映画)
5.0
台北のカフェを舞台に、カフェを切り盛りする姉妹や物々交換を通じた人々の交流を描いた、シアオ・ヤーチュアン監督のドラマ映画。ホウ・シャオシェン監督の作品『フラワーズ・オブ・シャンハイ』で助監督をした縁で、本作を含めてシアオ・ヤーチュアン監督の作品では、ホウ・シャオシェンが製作総指揮として参加している。

グイ・ルンメイが主演ということで以前から観たくて、ついにDVDを購入して鑑賞したが、これが大正解だった。とにかく映画全体を通じて美しいのである。映像的な美しさ(カフェでのシーンはもちろんのこと、時々挿入される台北の景色・夜景も綺麗、台北101が印象的)はもちろんであるが、そこで描かれる人々の心も美しい。最初はカフェを経営する姉ドゥアルが自動車事故で修理代の代わりにもらった大量のカラーの花束を処分する目的で考え出した物々交換なのだが、それがやがて物理的実体のある「もの」どうしの交換ではなく、歌、労働、ストーリーといった抽象的なものとの交換になっていき、人々の心の交流が生まれていく様子が描かれていく。そこには、人々の幸福感は物質的な側面だけではなく、精神的な側面が大きいというメッセージがさらりと表現されている。

グイ・ルンメイが演じるのは、念願のカフェをオープンして切り盛りしていく姉のドゥアル。最近の映画で見せるファム・ファタールぶり(これもグッとくるのだが)とは打って変わり、元気で活発な妹を見守る優しいお姉さんというキャラを演じているが、これがたまらなく魅力的なのである。こんなカフェならば毎日でも通ってしまいそう。実際に、本映画の撮影のために作ったカフェは(グイ・ルンメイはいないが)公開後に営業していたとのこと。現在は閉店しているが、このカフェが営業しているときに台北に行っていたので、その当時にこの映画を知っていればと思うと、とても残念。私のようなグイ・ルンメイのファンにとっては、must-watchの映画だと思う。(すでに3回も観てしまった。)

グイ・ルンメイだけではなく、妹を演じたリン・チェンシーもなかなか良い。最初見たときに男性かと思ってしまうほどのボーイッシュな美しさが魅力的である。本作が本格的な映画デビュー作だそうで、グイ・ルンメイがデビュー作『藍色夏恋』で見せた自転車を漕ぐシーンと同様の自転車シーンも披露している。その後も台湾で活躍していて、TVドラマ『台北ラブ・ストーリー〜美しき過ち』などでも主演している。
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