荒野の狼

どん底の荒野の狼のレビュー・感想・評価

どん底(1936年製作の映画)
3.0
ゴーリキーの原作を読んでから一年以上して本作を視聴。原作はロシアの最下層の個性的な民衆を描いた深い短い戯曲。本作は名匠ジャン・ルノアールと名優ジャン・ギャバン主演の映画ということで原作の世界が再現されているかと期待したが、ストーリーは原作の流れに沿ってはいる部分はあるが、舞台はロシアというわけではなく、ラストの展開も大きく異なり独立した作品と捉えたほうがよい。
映画ではギャバンの演じるペペル、その元愛人のワシリーサ(シュジ・プリムが美しい毒婦を好演)、ペペルの友となる男爵(ルイ・ジューヴェ演)は個性的で魅力がある。しかし、原作で印象的なルカとアンナは映画の登場場面は短く残念。“役者”とナースチャ(Jany Holt演)は、原作に近い。ギャバンの相手役ナターシャを演じるJunie Astorのことはルノアール監督が酷評しているが、この役に要求される初初しさがなくミスキャスト。
メッセージ性が強く重い原作の再現を期待すると裏切られるが、原作より明るく希望の持てる後味の残る軽快な映画として一定の評価はできる。「大いなる幻影」「望郷」の一年前の32歳の若いギャバンが見られる映画としてもファンには薦められる。
荒野の狼

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