三隅炎雄

黒い海峡の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

黒い海峡(1964年製作の映画)
4.0
暗く陰惨なメイクをしたやくざの石原裕次郎が、組の金を盗みクラブ歌手の吉行和子とともに姿を消した兄弟分の中谷一郎を追う。
十朱幸代とのメロドラマもあるがどちらかというと控えめ、アクションとハードボイルド色が前に出て、全体の印象は凄惨である。現在過去絡み合うなかなか入り組んだプロットで、主人公を含め複数の人生が徐々に悲劇へと押し流されていく。組葬に殴り込んで血の海となるのは東映やくざ映画でも見た光景だが、鶴田浩二や菅原文太と裕次郎では背負うイメージが違うので、この血まみれのラストは個の自由への闘争のようで鮮烈であった。新人藤竜也が見せる咆哮は数年後のニューアクションの時代を予告するようでもある。

渡辺武信は『日活アクションの華麗な世界』で、この映画の裕次郎の最期を『灰とダイヤモンド』のチブルスキーと重ねている。裕次郎がある世代にとってスタア以上の何かであったことが分かる。
三隅炎雄

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