あでゆ

サマーウォーズのあでゆのレビュー・感想・評価

サマーウォーズ(2009年製作の映画)
2.7
◆Story
天才的な数学力を持ちながらも内気な性格の小磯健二は、あこがれの先輩・夏希に頼まれ、長野にある彼女の田舎へ。そこで二人を待っていたのは、大勢の夏希の親せきたちだった。しかも、健二は夏希から「婚約者のふりをして」と頼まれ、親せきの面々に圧倒されながらも大役を務めることになる。そんな中、健二は電脳空間OZで使用しているアバターを乗っ取られてしまう。

◆Infomation
単館公開からスタートし、口コミでロングランヒットとなった『時をかける少女』の細田守監督が放つ劇場アニメーションの最新作。ふとしたことから片田舎の大家族に仲間入りした天才数学少年が、突如世界を襲った危機に戦いを挑むことになる。主人公の少年・小磯健二の声を担当するのは、『千と千尋の神隠し』などで声優としても定評のある実力派若手俳優・神木隆之介。良質なアニメーション映像と、壮大なスケールの展開が見どころ。

◆Review
改めて比較しながら観ると『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』を基にして作られたとは思えないほどの駄作。

オリジナルでできたことが全くできていないのが本当に不思議なのだが、一つには劇場長編としてそれなりの尺になったにも関わらず、本作では人物描写が成立していない。
主人公も東京の親友も夏樹先輩も内面を描いているようで全く描けておらず、他の家族をとっても頭の固い警官やデジタルに理解のない女など、テンプレートじみていてキャラクターが味気ないものになってしまっている。

特に隠し子であり、本作で描かれる事件の原因を引き起こした侘助は家族、あるいは社会(これは明らかなメタファーでしょう)に対して溶け込めなかった存在だが、他の家族がそれを"赦し"、両者とも全く成長や学びのないままに(少なくとも感じられなかった)マイノリティである侘助を飼い殺しにしようというラストはいささか傲慢ではないだろうか。
祖母が死んだショックを利用して、なんとなくお互いが感傷的な気持ちになっている間に取り込んでしまおうというのだ。

中盤から終盤に入るあたりまで夏樹先輩の存在感が全くなくなったと思ったら、最後にこいこい勝負のために引っ張り出されたりと、シナリオに対してキャラクターを持て余している印象も残る。
余談だが、花札のルールなんて知らない人がほとんどだと思うので、最終勝負にしてはなかなか盛り上がりにくいのではないだろうか。
オリジナルでは大量のメールを転送することで相手の回線をパンクするというギリギリ現実的な仕掛けだったラストも、アバターのBETに使うというイマイチルールがわかりにくいものになっていたところも不満。
あと流石にRSA暗号を暗算で解読は無理がある。

また、オリジナルでは短い作品の中にテンポよく差し込まれていたコメディー表現が本作ではなりを潜めており、なんとなくどこかで見たことがあるような田舎あるあるを披露したり、大家族の雰囲気を醸し出したりはするものの、そのどれもがセンスを感じられず全く笑いにつながらない。

唯一アニメーションに関してはクオリティは高いと感じた。
田舎の大家族を写すシーンも、OZ内で描かれる戦闘シーンも、そのどれもがみずみずしい動きに溢れていて、動いているのをみるだけで多幸感を覚えることができる代物に仕上がっていたと思う。
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