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ミリオンダラー・ベイビーのEyesworthのレビュー・感想・評価

ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)
4.7
【死の淵に立ち闘うボクサー】

クリント・イーストウッド監督が主演も務め、アカデミー作品賞も獲得したボクシングヒューマン映画。

〈あらすじ〉
ある日、老トレーナーだがボクシング熱に溢れたフランキー(クリント・イーストウッド)
の腕を見込んでマギー(ヒラリー・スワンク)という女性が寂れたボクシングジムにやって来る。最初は、女性でかつ30歳を越えている彼女の入門を拒否していたが、20年来の親友で元ボクサーの同僚スクラップ(モーガン・フリーマン)が、必死でトレーニングに励む彼女をアドバイスするようになり、次第にフランキーもマギーの熱意を感じ取り、本格的に指導を開始した。彼女の実力は本物で、プロデビューして勝利を積み重ね評判を呼んでいく。しかし、過去の苦い経験もあり、選手の安全面をあまりにも考慮するフランキーは次第に彼女の意向に沿えなくなっていく。それでも最後はタイトル戦挑戦を呑んだ。その結果、またしても彼の目の前で悲劇は訪れてしまう…。

〈所感〉
こないだ見たレイジング・ブルもそうだが、ボクシング映画は見ている我々にもその痛みがわかりやすくリアルに伝わってきて、緊迫感の伝導率が他のアクション映画等とは一味違う。ボクサーになるとは、いずれどうしようも無い怪我を負ってもそれすらも受け入れる覚悟が必要なことなのだろう。その点で、マギーは死ぬまでリングに立ってリングで死んでもよい、という本当のボクサーだった。ただ、彼女の家庭は絶望的で、そんな彼女の懸命な努力虚しく常に自分たちのことしか頭に無く非常に腹が立つ。こんな家族見捨てればいいのに!それでもマギーにとっては大切な家族であり、それ以上に親密な間柄となったトレーナーのフランキーとの年齢を超えた絆に胸が熱くなる。フランキーは本人よりもボクサーの身を案じてきた結果、たとえ本人に見捨てられようともその命を最優先しようとしてきた。それだけに後悔は死ぬまで押し寄せてくるだろう。だけど、彼には小さな中古家屋でイエーツの詩を読みながらレモンパイを食べて少しでも健やかに暮らしてほしい。それはマギーの願いでもあるだろう。題材以上に重いストーリだが、この結果もまた人生である。それを痛感させられ程に重厚感あるメッセージ性に溢れた作品だった。
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