荒野の狼

エスパイの荒野の狼のレビュー・感想・評価

エスパイ(1974年製作の映画)
5.0
小松左京原作の1974年の94分の映画。個性ある登場人物と海外、海、空、日本と舞台が替わり、飽きさせない。加山雄三をリーダーとする超能力を持ったグループ(藤岡弘、由美かおる、草刈正雄ら)が闘う相手は、これも超能力者の集団で、リーダーは若山富三郎演ずるウルロフ。ウルロフは世界各国間で戦争を引き起こさせることによって人類同士を、彼らの殺し合いで排除し、超能力者だけの世界を作ろうと目論む。
主演の藤岡は、早い段階に、一時的に超能力を失うが、黒人俳優(実際にカリフォルニアの柔道チャンピョン)と柔道技などを駆使して格闘。ラスト近くで、絶体絶命の場面に追い込まれるが、ここでの切り抜け方は、この映画の最大の見せ場で、変身ヒーローものを見ているようである(藤岡は言わずと知れた仮面ライダー1号を演じたが、この場面はヒーローにふさわしい)。
由美は、はまり役で、可愛らしく紅一点の活躍。出てくるすべてのシーンで異なる衣装で登場。草刈は、愛犬とコンビを組むが、この犬がいくつかのシーンで活躍。犬が、藤岡が運転する車を先導して走るシーンはひとつの見せ場。特撮も、本作の見せ場だが、とくに“移動マスク“を使っての”テレポテーション“のシーンは息を飲む。
DVD映像特典のコメンタリーは、小松、由美、西山助監督、聞き手の尾山ノルマで、製作後30年の録音だから2004年ころのものとなる。2011年に小松は死亡してしまったので、貴重な録音。小松は、由美のファンで、映画化の条件に由美の出演を要求したことなどを語っている。尾山は貴重な情報を提供(例1.草刈の幼馴染を演じたゴールデンハーフの高村ルナは2004年にハワイで逝去。例2.藤岡を襲う殺し屋の中屋敷哲也と新堀和夫は仮面ライダーのスーツアクターで、藤岡との対決はファン必見のライダー同士の戦いとなる)。
DVD特典には、劇場予告編がついているが、ここでは映画に未収録のシーンなども含まれており貴重だが、ラストシーンなど主要な場面がほとんど入っているので、鑑賞は本編を見てからにしたい。ユニークな特典は、公開当時の映画のパンフレットが見られること。拡大すれば、読むことも可能(同時上映だった“伊豆の踊り子“の部分は含れていない)。
封入特典の8ページの冊子には、本編には含まれていない由美のスチル写真などを収録。完璧な映画ではなく、ちぐはぐな点も多々ある映画(平尾昌晃作曲、尾崎清彦が歌う主題歌は、テンポがよく現代的な本作にはそぐわない感もあるが、作成当時の昭和の匂いがしてご愛嬌)ではあるが、見せ場たっぷりの本作には満点を付けたい。以下のセリフは名言。

若山:愛か。愛ゆえの超能力か。(”超能力は愛”という考えは、小松の考えではなく、福田純監督が、死に際に水飴を欲しがった母親との思い出話からとパンフレットにはある)

藤岡:ウルロフを、あんな怪物にしたのが、人間だったというのは悲しすぎる。
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