ミシンそば

ステージ・ドアのミシンそばのレビュー・感想・評価

ステージ・ドア(1937年製作の映画)
3.8
ワインスタインの狼藉を知った後だと、どうしても描写が(時代ゆえに)生温いと感じつつ、女優の卵たちが互いに蹴落とし合う醜さとプロデューサーの邪悪な商業至上主義(と、明確な描写は時代ゆえ成されていないが肉欲)が表現されていないわけではなかった、所謂「舞台裏」もの。

ラ・カーヴァ作品は「襤褸と宝石」の時も思ったけど登場人物みんなセリフが多いこと多いこと。
若い女優の卵と言うには若干薹が立っている気もしなくない、だがキャサリン・ヘプバーン、ジンジャー・ロジャースの両名は、覇気充分。
それこそ両者のオーラが見えるくらいには充分。
アドルフ・マンジュー(この時点では恐らくヘプバーンと敵対してない)も、こういう邪悪さが滲み出たようなキャラクターを演じさせると嵌るなあ。
時代が時代だけに、邪悪さを全力発揮させることは出来ていないだろうが。

そしてアカデミー賞にノミネートされたアンドレア・リーズの演技は、ヘプバーン、ロジャース、そしてのちに有名になる女優は大体いるようなフットライト・クラブの女優たちの面々を全て寄せ付けないレベルの名演。
クライマックスの、彼女が階段を上るシーンの表情の凄まじさは、30年代の映画として観たとしたらあまりにも凄すぎて声にならない。
彼女の表情の演技もそうだが、撮り方も。

で、物語の方はと言うと、先に挙げた蹴落とし合い要素は最初の方を過ぎるとあんまり目立たなくなり、終わり方も何か「彼女たちの間に絆はあった」的な感じになるのは、個人的にモヤっとした。
アンドレア・リーズ演じたケイは悲劇的な最後を迎えるけど、リーズ本人は本作出演から約3年後に結婚して芸能界を引退したらしい。

結婚生活はどうやら幸せな物であったとのことだが、彼女が俳優を続けた未来もあったのやもしれないね。