デヴィッド・リンチの作品にしては珍しい
じんわり心に沁み入るロードムービー
ニューヨーク・タイムズに掲載された実話が元になってるらしい
普段、難解な作品ばかりのイメージだけど
こんなに平凡で牧歌的で、人との出逢いと人生が素敵に見えて、人の心に寄り添うようなストレートな作品も作れたんだと正直ビックリ
人に歴史あり
とても良かった
傑作と言って良いと思う
娘ローズと住むアルヴィン・ストレイト
腰が悪く、倒れても一人で起き上がることも出来ないご老人だが、本人は至って元気
ある日、仲違いをし数年来会っていない兄ライル・ストレイトが脳卒中で倒れたと知らせを受けた
長年の確執を解消すべく、兄に会う決意をするアルヴィン
身体の不自由なアルヴィンは、唯一の交通手段である芝刈り機に荷台を取り付け、兄の元を目指して旅に出た
時速8km、560kmにも及ぶ長い旅路
遠く離れた歳月を思い、人と出逢い、人に助けられながら、ゆっくりと人生を振り返る
スゴイじんわりくる
ちょうどいい温度の風呂に浸かったみたいに、内側からポカポカくる感じ
アルヴィンのスタイルがとても好み
テンガロンハットにチェックのメルトンジャケット、ジーンズにウエスタンブーツ
胸ポケットにはスウィッシャースイート
めちゃカッコええ
こんなジジイに憧れる
自分のスタイルを持ってる人ってカッコええし憧れる
一個一個のシーンがとても絵になってる
窓越しのシルエットで流れる雨や、畑を行くトラクター、焚き火を眺めて吸う葉巻や、誇らしげに掲げられた鹿の角
一つ一つのエピソードとシーンカットが絵葉書のようで心が落ち着く
時々で出会った人と共に過ごす時間で、交わす言葉に年季が滲み出ていてジンワリと入ってくる
押し付ける風でもなく、何処となく自分に言い聞かせているような
そこがまたイイ
これから先、行き詰まったり悩んだりした時に振り返ると、また違った一面が見えるんじゃなかろうかと思う作品。
この一杯のビールには何とも言えない深みがあると思う
いつか自分もあんな一杯に巡り会いたい
その時もまだ、頑固に葉巻を吸っていたい
離れていても積み重ねた歳月に言葉はいらない
不粋に終わらない何処がまたイイ
そして、
娘が佐々木蔵之介に見えるのはオレだけかな?