Kei

ストレイト・ストーリーのKeiのレビュー・感想・評価

ストレイト・ストーリー(1999年製作の映画)
3.3
病気を患い死が近づいている兄を訪ね芝刈り機で旅をするアルヴィンという老人の物語。
主人公のアルヴィンは兄が倒れたという知らせを聞き、家に娘のローズを残し芝刈り機で州境を越える長旅に出る。
旅の道中では悩みを抱える若者から優しい夫婦、同じ世代で戦争を経験した老人まで様々な年代の人と出会い交流する。
本作品には大切な人間関係を長く続けるための示唆が含まれていた。
アルヴィンと兄・ライルは非常に仲が良かったが取るに足らない些細な喧嘩で10年もの間仲違いしてしまった。
こうした事実に対してアルヴィンは「口争いの原因が何であれ、もうどうでもいい。仲直りしたい」と言った。
時に白熱した口論は私たちに冷静さを失わせ、そこで一旦溝を作ってしまうとお互いのプライドが邪魔をして仲直りに踏み切れないことがあるが、その口論の内容が些細な事であれば、冷静になりプライドを捨てて自分から仲直りに踏み切ることで本当に大事な人間関係を壊さずに済むということを学んだ。
本作品にはこうした良い点もあったが、釈然としない点もあった。
終盤では、アルヴィンが兄・ライルと仲違いしてしまった過去を清算しまた仲良く過ごすために死が近づいている兄に何としてでも会いたいという想いが語られる。
しかし、アルヴィンは自身の「目が悪く免許も持っていないため自身で車で行くことは出来ないが、他の誰かに頼んで連れて行ってもらう(バス等も含む)ことはしたくない」という拘りから、芝刈り機という非常に時間がかかる移動手段を選んだ。
この決断は兄が死ぬ前に会える可能性を低くするものだ。
こうしたアルヴィンの言葉と行動の乖離が釈然としない点であった。
総じて、大事な人間関係を長く続けるための示唆が含まれていた点は評価出来るが、物語の内容は特段新鮮味のないものであった点は評価できない点であった。
リンチ監督の作品には「マルホランド・ドライブ」や「ブルーベルベット」など奇妙な世界観のものが多いが、本作は異なっていたためリンチ監督の新しい世界を知ることが出来た点が良かった。
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