りり

ロベレ将軍のりりのレビュー・感想・評価

ロベレ将軍(1959年製作の映画)
4.7
先日観た「自転車泥棒」の監督ヴィットリオ・デ・シーカが俳優として出演している。第二次世界大戦末期のイタリアが舞台。ギャンブル好きで金のためなら良心の呵責もなく人を騙す男が主人公。ナチスに身内を捕らえられた人たちすらカモにし、金を渡せば自分が釈放させてやれると吹聴して回る。

呆れるばかりに自分のことしか考えずに生きている主人公はあるきっかけでナチスの捕らえた人々が収監されている刑務所にイタリアの英雄ロベレ将軍になりすまして紛れ込み、パルチザンの情報を聞き出す役を負わされる。

そこで主人公が見聞きする出来事、それによって心境に変化が起こっていく様、その結果選び取る行動の描写に強く胸を打たれる。何もしていないのに収監されたと騒ぐ登場人物に対して一緒に収監されたパルチザンのメンバーが語る言葉には、観ている者も我が身を振り返ってしまう力がある。自分だけが安楽に生きられるよう汲々とするのか、自分にも社会を変えるためにできることがあるはずだと行動するか。地上への階段を上る主人公の別人のように気高い表情が忘れ難い。
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