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アニマトリックスのnetfilmsのレビュー・感想・評価

アニマトリックス(2003年製作の映画)
4.0
 『マトリックス』3部作をモチーフに作られた9つの短編アニメーションを集めたオムニバス作品で、多分に二次創作的な意味合いを含みながらも押し並べてレベルが高い。偉大なる3部作のモチーフとしてウォシャウスキー姉妹が東洋思想ひいては押井守らを筆頭とした日本のアニメーションに多大な影響を受けたのは明らかだが、今作はその恩返しと言わんばかりに前田真宏、渡辺信一郎、川尻善昭、森本晃司ら日本のクリエイターがそれぞれの短編を監督している。トリロジー本編には直接関与しないものの、『マトリックス リローデッド』の序章となる物語や、キッドの誕生物語にはラストにネオが僅かに姿を現すし、トリニティがまだネオに出会う前の物語もある。まだ彼らが群れとなる前の孤独な時代の物語だ。そして二話目の『セカンド・ルネッサンス パート1・パート2 』では、マトリックスの世界観がどうして作られたのか、なぜ人類は機械に支配されるようになったかのかその秘部が明らかにされる。

 9つの物語は『マトリックス』3部作を読み解く上で重要なレイヤードを作るが、当然玉石混交で各人の世界観にバラツキがあるのも仕方ない。3Dもあれば2Dもあり、日本の深夜アニメ的な湿度の群像劇もあればアートの実験映画のような極めてドラッギーで危険な映像もある。総じてウォシャウスキー姉妹は本来こんな映像世界が3部作でもやりたかったのではと思えなくもない。2002年時点での劇映画のVFXの限界をわかった上で、姉妹はアニメ版ではグラフィック的にかなり過激なことをやってやろうという意図が透けて見える。『マトリックス』の世界というのは、何もネオやモーフィアスやエージェント・スミスが出て来る世界だけとは限らないのだ。真実の中に虚構があり、逆もまた然り。今作は3部作の補強線であり、映画を読み解く補助線にもなり得るのだけど、別に本作を観ることは必須ではない。だが重力の檻から解放されたキッドを迎え入れたネオは少年の顔を眺めながら最後にこう呟く。「You Are Not Alone」 君は一人じゃないと。
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