こーひーシュガー

炎上のこーひーシュガーのネタバレレビュー・内容・結末

炎上(1958年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

【美と傷―――『炎上』】
三島由紀夫『金閣寺』の映画
当然この作品が先に作られたことは承知だが、ハリウッド映画オタクの僕はこれを観ながら『ジョーカー』や『タクシードライバー』を想起した(少なくともこれらの作品に影響を与えているのではないか)。
鶴川がずっと溝口と一緒にいれば…
親との確執、住職たちとのすれ違い、悪友、コンプレックス…
世間に翻弄され、己の好きなものを燃やして葬り去ってしまうのはやはり、それを自分の中だけのものにしたかったからか、自分を狂わせた世間への復讐心からなのか…
心の拠り所の重要性を痛々しく突き付けてくる名作。

それにしても市川雷蔵の表情演技は目を見張るものがある。
市川雷蔵は『眠狂四郎』などのイメージがあったが今作は新たな境地と言われるだけあり、雷蔵のイメージが確実に変わった。
どもりの演技も素晴らしかった。
背景が少しずつ変わっていき、回想シーンに入る演出が風情があって、興味深い切り口だと感じた。