てる

我等の生涯の最良の年のてるのレビュー・感想・評価

我等の生涯の最良の年(1946年製作の映画)
4.5

すごく良い映画だった。
恥ずかしながら、この作品を知らなかった。なんと調べると『ローマの休日』の監督で、この作品自体も数々の賞を受賞した名作であることを知った。

古くさくない。話しも分かりやすく、感情移入もしやすい。言うことなしの映画だった。
群像劇で、それぞれに関係性は薄いのに、なぜか違和感を感じなかった。
終戦直後の兵士で、帰りの車が一緒になっただけの薄い関係性だ。実際に3人が一同に介するシーンはほとんどない。なのに、なぜか友情を感じるし、彼らが古くからの付き合いのように感じる。

戦争を勝ち抜いたことで、国民全体がどこか浮かれている様子が伺える。ただ、長いこと兵役に出ていた彼らと、アメリカ本土にいた国民とはやはりどこか意識のズレがあり、それが、浮かれた雰囲気に影を射している。
3人が共通しているのは、戦争に参加していたということのみだ。なんだったら、戦地に赴いていない者もいるし、3人の境遇には全くもって繋がりがない。でも、戦争を体験したという共通認識が彼らの友情を繋いでいる。戦地でも出会わず、普段普通に生活していても一切交わることがない3人の群像劇。
とても不思議だ。というのも、この3人の友情の物語でもないし、三者三様に各々の幸せを各々がなんとなく掴む話しなのだ。アルとフレッドの2人の話しにはペギーという共通点はあるが、アルの話しの中心ではない。

なんというか、この当時のアメリカ人の生活を切り抜いたようなリアリティーがある。話しに無理がない。感情に嘘がない。しっかり人間を描いている。だから、感情移入がすんなり出来るし、3人が幸せになることを祝福できる。

それにしてもホーマーの義手はどうやっているのだろうとずっと疑問だった。本当に腕がなくて、本当に義手をしているように見えた。しかし、この時代に現代のようなCGの技術はないし、まさか本当に義手の役者がやってるなんてことはないよなぁと思っていた。
これは偏見だといわれても仕方がないのだが、この時代に義手というハンデを抱えた人が役者をやっているとは思えなかった。
そのまさかだった。実際に義手の人が演じていた。驚きなのは、彼が演技初挑戦だったということだ。全くそう見えなかった。彼の芝居は堂に入っていた。戦争によって義手になってしまった男の苦悩をしっかり演じていた。
実際にこの作品で彼はアカデミー賞助演男優賞を受賞している。

様々な奇跡が折り重なった作品だったんだなぁと感じた。
てる

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