菩薩

埋もれ木の菩薩のレビュー・感想・評価

埋もれ木(2005年製作の映画)
4.7
冒頭、魚喃キリコの漫画から始まる、なんとも不思議な引力を秘めた映画。

子供の頃の疑問、頭の中の「?」の中心は「なに?」とか「どこ?」とか抽象的な物だった気がする。大人になるにつれそれは「なぜ?」とか「どうすれば?」という具体的な物を追求する物に変わった。

それが悪いことだとは思わないけど、自由の幅と言うのは生き続けるにしたがってどんどん狭くなる。子供の頃は何にでもなれるような気がしたし、どこへでも行けるような気がした。でも今は違うし自由じゃない。自分の自由を制限していく上で悩みが生まれるし、現実が忍び寄ってくる。

でも本来は、何か行動を起こすにも、言葉を紡ぐにも、理由なんて必要じゃないのかもしれない。劇中の言葉を借りれば、言葉は乗り物だし、時間も乗り物で、人間はそれに乗って只生きていけばいいだけ、未来へ向かって行けばいいだけ。おとぎ話はそうして自然発生的に生まれ引き継がれてきたわけだし。子供の頃の自分も明日がどうなるなんて考えなかった。せいぜいファミコンの事とおやつの事くらいだった。


結局自分でも何が言いたいのか分かんないんだけど、何故か琴線に触れる物があったし、最後鯨が浮き上がる時は何故か涙が出たし、自分も思わず拍手した。後、坂田明が「ANARCHY」って書かれたTシャツ着てるのが面白かった。アルヴォ・ペルトの音楽も心地よし。
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