このレビューはネタバレを含みます
運動会の日に二人三脚で転ぶとタイチの鏡に吸い込まれる。
前2作と大幅にテイストが変わった作品。前作までのあえて明確な主人公を作らず感情移入先をバラけさせたジュブナイルホラーから1人を主人公にしたヒューマンドラマ寄りに舵を切っている。
"鏡"にフォーカスすることで人間の感情というのは"憧れ"と"嫉妬"の表裏一体だということを印象付けられた。
タイチの"憧れ"と"嫉妬"の感情が渦巻き、憧れの感情ではただ友達になりたい。嫉妬の感情では自分の現状に嘆きその場所まで引きずり下ろしたい。こういった感情の起伏に子供達は巻き込まれる。
寂しさから生まれる表裏一体の感情。そこを同じ寂しさを知っているリョウが感じ取り、タイチと友達になることで現実世界に帰ることが出来た。
ラストシーンは秀逸。リョウは引っ越して友達と離れ離れになるが、友情の繋がりは切れない。距離が離れても友達であるということを印象付ける別れで、それは同時にタイチとの友情も途切れないと示唆しているように感じた。
かなりホラー要素薄めで物足りなさも感じるが、ヒューマンドラマ好きな自分にとっては好みな作品。
個人的評価:良作