茶一郎

最後の戦いの茶一郎のレビュー・感想・評価

最後の戦い(1983年製作の映画)
3.5
【短】いつの間に「巨匠」と呼ばれ始めたと思ったら、お次はNetflixに自身の会社を買収されかけているリュック・ベッソン監督の長編監督デビュー作。本作『最後の戦い』は、おおよそ長編処女作とは思えない、モノクロ、35mm撮影、シネマスコープ、そして全編セリフ無しという非常に挑戦的な作品です。

 本作の舞台となるのは、『マッドマックス』的な荒廃した未来。ベッソンは予算の少なさを利用し、逆に引き算された世界観を作り上げました。
 しかし『マッドマックス』と言っても、決してバイオレンスに満ち満ちているという訳ではなく、そのほとんどのストーリーは未来人のコメディ的なやり取りです。カッコいい画とは裏腹の、あまりにもB級的な安っぽい劇伴がそのコメディ要素を強調していました。後のベッソン作品で出世していくジャン・レノもお馬鹿な悪役として活躍します。

 ヨーロッパ・コープの経営を傾けた『ヴァレリアン』も、フランス映画史上最大の予算をかけた『フィフス・エレメント』もSF映画でしたが、ベッソン監督の根本には本作『最後の戦い』というSF映画があった事を思い知ります。
何より『ヴァレリアン』、『フィフス・エレメント』において「愛」が全てを解決させたように、実は本作『最後の戦い』のタイトルは、「愛」を奪い合う男たちの戦いを指すのです。
茶一郎

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