阪本嘉一好子

Yellow Asphalt(イエロー・アスファルト 愛と裏切りの砂漠)の阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

4.3
個人的にイスラエルを紐解いてきた。特に、ハシディックユダヤ教徒。他にもイスラエルの少数民族、ドゥルーズやジャハリンベドゥイン(The Jahalin Bedouin.)に焦点を当てた映画は少ない。特にイスラエルに住むベドゥインの映画を見たことがなかった。


オムニバスで三部作の構成をとっているので、ジャハリン・ベドゥインというイスラエルの南東部に住んでいる少数民族のステレオタイプをよく描いていると思う。そう言ったら身もふたもないが、イスラエルの民として扱われていない少数民族。イスラエル側はベドウィンを何処かに(この映画はエルサレム東部に住んでいるベドゥインらしい)移して、その土地を利用したがっているようだ。この映画では描かれていないが、他ので見た事がある。ジェンティフィケーションで使えそうな土地は奪って、ユダヤ人の住宅地にするのかもしれない。あくまで私の推測。この三部作のオムニバスは、ベドゥイン族と関わった人々(イスラエル人、ドイツ人)とベドゥイン族のある関係を描いている。少数民族のベドゥインはイスラエルでは存在価値の薄い人間で、自治区に住んでいる。彼らはイスラエルにすんでいるが選挙権、拒否権、人権などあるのだろうか。この映画ではイスラエル人・ドイツ人とジャハリン・ベドゥイン人に対してなんらかの駅贔屓や憎しみでこの映画を制作しているわけではないようだ。帯に長し隙に短しでどっちもどっちだねと思わせる内容だ。監督はどちらの立場にも立たず、両方の文化の違いから起きる摩擦があり、それが人間関係をより複雑にさせていると言ってるようだ。不思議な映画だ。


簡単に内容を説明するが、三部作の『Black Spot』は短編で、その後、『Here is not there 』、そして、『Red Roofs 』が一番長くなっている。

まず、 Black Spot( a place on a road that is considered to be dangerous because several accidents have happened there) 
イスラエル人の二人が、ベドゥインの住んでいる地域とイスラエル境の幹線道路を運転していて、ベドゥインの子供を引いてしまう。不可抗力のような事故であった。二人は子供を砂漠におきざろうとするが、トラックがスタートしない。ベドゥインの人々(男性のみ)が次から次に現れて、二人は逃げられなくなる。子供の母親は泣いて子供のそばにそばに行くことを男性の一人に拒否され、砂漠で泣き続けている。その間、二人とベドゥイン民族の男性たちがお互いに睨み合っている。私は金で解決するかなと思って見ていたが、金ではなかった。スペアータイヤだった。スペアータイヤを吟味したベドゥイン民族の男性たちはそれを転がして砂漠に戻っていく。一人の男性が泣きくずれている母親の枯れ木の上に自分のシャツを脱いで、女性を日陰にして置きさる。
この意味はなんなのか? 幹線道路はユダヤ人の土地とベドゥインの土地の境にしている。タイヤ一本が子供の命と引き換え?

次はHere is not there 
簡単に書くとドイツ人の女性がベドゥインの男性と結婚してベドゥイン民族と住んでいる。子供が二人いるが、ドイツに子供を連れて帰りたがっている。シャイフ(Sheikh,長老・族長)の会議で、離婚をやめろと。長老はこの結婚に初めから反対していたらしいが二人は結婚したと。結婚前は晴れた惚れたで二人は楽しそうにラクダに乗っているが、結婚後は男はイスラム教、男社会、の掟に従わせて女の愛情は冷めてしまったようだ。そして、ドイツ女性は夜中、子供を連れて逃げ出す。(これは夢の中の出来事のようで、最後は男に捕まって殺されるようだ)この夢を見たのにも関わらず、女性は夜中子供を連れて立ち去る。惚れて結婚してもその後、民族に合わせて郷にいれば郷に従えで生活をするのは容易でない。この地域のベドゥインはかつての遊牧民族生活ではないが、イスラエルの民とまじ合って生活していない。自治区に住んでいる。

次はRed roofs
これはイスラエルの妻子持ちの農場主とその家庭に奉公に行っているベドゥインの夫のいる女性とベドゥインの若者の話。イスラエル人の農場主は調子が良く、ベドゥインの夫のいる女性に甘い話を持ちかける。イスラエルの農場主の全てを信じて、惚れてしまったベドゥインの夫のいる女性の悲劇。農場主に女性を殺せと命令されて、銃を手に取るが、それができないベドゥインの若者。彼の言葉が心に響くね。「街に行ってイスラエル人と混ざって生きていけ』と言って車から降ろす。これが最高の行為だが、不倫の挙げ句の果て、イスラエルの農場主の言葉にまだ疑いが持てず信じ切ってしまった本能の塊のベドゥイン女性。彼女がまた戻っててきて、殺される。この映画のシーンは心臓に悪いのでここまでにする。因果応報で喧嘩両成敗になった。

*(ユダヤ人かとうか映画では明確ではないので、ここでイスラエル人と記した。)