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魚影の群れのとぽとぽのレビュー・感想・評価

魚影の群れ(1983年製作の映画)
4.0
マグロか人か…海とお前が好きだ!

この作中で度々繰り返されるテーマは、一見すると"そんなの人間だろ"と思うかもしれないが、それが不思議。本作を見ていくうちに、この漁師という生き方に思いを馳せる。…にしても夏目雅子がすごすぎる!いや、三者三様よくて素晴らしかったんだけど、個人的にはやはり夏目雅子さんのあのエキセントリックとはまた違うのだけどエネルギッシュで唯一無二な存在感が強烈に焼き付いた。
訛っているから結構セリフを理解できないこともあったけど、そんなのお構いなしに面白い。動き回っているのに不思議と収まりが良かったり、"そこワンカットで行く?"みたいな長回しや、執拗に役者を追い込む血の通ったダイナミックな画。語弊を恐れずに言ってしまえば役者が甘えられない撮り方とでも言うか。例えば今なら消すであろう窓ガラスへのスタッフの映り込みもそのままにマグロ漁のリアルをドキュメントさながらに収めるさまは圧巻。まさしく死闘を演じる闘いだ。マグロと人間の区別がつかないで作品全体のテンションが高い。高さや奥行き、視点移動、XYZ軸縦横無尽にすべてを使って、一つのカットで一つの物語を紡ぐよう。
これは上手く説明できないけど、生きた作品だなって思った。母なる海からの生命力が溢れていた。ロマンもへったくれもない厳しい現実を生きて生きてそれでもまだ海に魅せられて。マグロ漁この道何十年の堅気な職人気質プロにしか見えない緒形拳に、世話のかかる佐藤浩市青年の、地獄か極楽しかない大博打打ち!
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