mingo

冷飯とおさんとちゃんのmingoのレビュー・感想・評価

冷飯とおさんとちゃん(1965年製作の映画)
4.5
アベンジャーズピカチュウユスターシュ愛がなんだも良いけど、山本周五郎原作3時間の超文芸大作、田坂具隆「冷飯とおさんとちゃん」は超必見傑作時代劇としてぜひラピュタでオススメしたい。ラピュタと錦之助後援会で折半したというニュープリント超綺麗で最高。色んなところで無限にかけてほしい。「冷飯」と「おさん」と「ちゃん」の愛にまつわる心が洗われる3話オムニバス形式の作品。

サプライズで1話目「冷飯」のヒロインであり宮本武蔵のお通役の入江若葉さんが登壇。1番お気に入りの作品とだけあって思い入れもひとしお、監督の演出で三度瞬きしただけなどのエピソードを披露。古書オタクの錦之助に、図書館並みの古本オタクであるわたし自身も投影してしまったが、佐藤勝の軽快な音楽と物語のテンポが程よく合い、ほのぼのした中に地道にやってきたことが成功に結びつく最高の話だった。千秋実になけなしの小判を懐から出すシーンや、桔梗の花(入江若葉)と菊の花(千秋実の娘の名前が菊乃)が交互にフラッシュバックされるシーンなど細かい芸が素晴らしい。

2話目「おさん」三田佳子が天然の魔性の女で夜の営み中に知らない男の名を叫んでしまう性癖の持ち主で、飯村雅彦のゆったりとした撮影が遺憾無く発揮された大人の恋愛小説風。現在と回想二つの話を同時進行させる演出が非常に映画的でもあり嬉しい。血に染まった生活用水や昼顔から死んだ妻おさんが出てきて語り合うシーンなど映画的カタルシスに舌を巻く。また新珠三千代と錦之助の身長差を丁寧にカバーするカメラは絶品。そして風呂場のシーンでは刺青が長い間映されるがこれは時代劇の終焉を意味しのちの任侠映画の到来を意味するのだろうか。。。

3話目「ちゃん」これは家族愛に満ち足りた傑作話。貧しさの中を逞しく生きる女房森光子と明るい子供たちが錦之助を想うラストでは号泣必至。また子役時代の藤山直美の一言一言がいちいち良くて劇場大爆笑。
オープニングでは演者より前に監督とカメラの名前をクレジットするのは田坂監督ならでは。演者ありきなのはもちろんだがやはり映画は監督の演出ありきで素晴らしい芸術作品へと昇華する。3時間フルで楽しめて手元に置いておきたい傑作の一本。
mingo

mingo