安堵霊タラコフスキー

ハックルの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

ハックル(2002年製作の映画)
4.8
新作が良い雰囲気だったから東京国際映画祭で見ようと思ったパールフィ・ジョルジというこの監督、過去の作品も気になって見てみたけど、これも実に自分好みの作品だった。

新藤兼人の裸の島の如く台詞を排して(台詞が聞こえて然るべき場所でも人物の声を除く徹底ぶり)田舎の風景を描く挑戦的な姿勢は、それだけで監督の映画観に共感と好感を覚えて堪らないものだった。

しかも描写を淡々と見せるだけでなく、時折ブレッソン的でリズミカルなカットと編集を挿入したり、どうやって撮ったのか不思議に思うモグラやナマズのシーンを映したりして、それが結構さりげないものだから度肝を抜くことも屡だった。

あと稀に単なる風景の映像と思わせてフィルムへと移行させたり、食事風景からレントゲン映像に変化させたりみたいな遊びの表現も面白くて凄い。

この挑戦的かつ実験的で面白い作品を手掛けた才能は賞賛せざるを得ず(実際多数の映画祭で受賞を果たしている)、自分の心も一気に掴まれてしまったが、こんな監督の新作に反応してチケットを確保した自分の勘を自分で少し褒めたくなった。