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熊座の淡き星影のooospemのレビュー・感想・評価

熊座の淡き星影(1965年製作の映画)
5.0
ヴィスコンティの救われなさの中でも窮屈感極まる居心地の悪さ。
なのに映画としての全ての要素が、あまりになめらかでしなやかで、もう何にも言えないけど泣けてしまう。
《子供の頃大人の恋をすると大人になっても無垢な心は戻らない》。彼女の忘れがたい過去の記憶と、その記憶からの終わりなき逃避。単純に逃避と言えば、追いかける側は他者であるなど体の外側に相手がいるものだけど、自分の内側に人生の宿敵が存在するというこんな逃避の形は、永遠に救われないし息苦しい。
そんな濃密なデカダンの中で描かれる、錆び付いた精神の描写があまりに美しくて泣く。母の弾く乱れたピアノの旋律、過去を思い返すかのように目の前の母親を見つめる彼女の涙、指輪を外す弟の指先、先の映されない螺旋階段、弟との甘い共犯関係。それを忘れやり直そうとするかのような、弟の手紙のシーンの後に続く、まっさらなタオルで顔を拭く彼女のシーン。これで僅かな希望を感じさせるのもつかの間、結局彼女は最後まで涙を流している。どう転んでも救われない。何故だかそのどうしようもない救われなさこそ人生の真理だと思わせられる、全てを委ねてしまう、ヴィスコンティ・マジック……
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