ミシンそば

旅のミシンそばのレビュー・感想・評価

(1958年製作の映画)
3.5
デボラ・カーとユル・ブリンナーの「王様と私」以来の主演共演で、ジェイソン・ロバーズの映画デビュー作、そしてアヌーク・エーメのハリウッド進出作。そしてロン・ハワードが子役として出ている。
何だこれは、めっちゃ盛ったなぁ。
そういう要素抜きにして、リトヴァク作品であることとハンガリー動乱が背景にある事なんかを含めて、結構期待していた映画である。

ただ事前の期待値はハッキリ言って超えられなかったな。
何と言うか冷戦が始まって大分経ち、露悪的な見解も互いに遠慮なく向け合うような米ソ関係のくせに、実に安易な救済への道筋が用意されている作品のようにも、どうしても映ってしまった。
ブリンナー演じるスーロフ少佐が、カー演じるアシュモアに対して下心を持っていて、下心がゆえに助けようと必死になって奔走するのだが、同ジャンルの本当に救いようのない結末を迎える映画とかも結構観てきた身としては、甘っちょろいと感じざるを得ない部分も多々あり、残念に思う。

現ウクライナ(当時ロシア帝国)出身のリトヴァクならば、そういう救いの無さを多少なりとも醸し出してくれるかなとも思ったが、期待していたそれは一方の視点からのもので、50年代の映画然とした、メロドラマチックで押しつけがましいものだった点でも残念(そしてアヌーク・エーメのハリウッドの紹介の仕方の雑さ加減って点でも)。
残念な点を挙げるとキリがないけど、それはハンガリー動乱を扱ったドラマとして見たらっていう話であり、ユル・ブリンナーを主役にしたメロドラマとして観た場合は、押しつけがましい終止の展開もある意味違うものに感じはする。
普通の悲恋、程度には。