似太郎

バルタザールどこへ行くの似太郎のレビュー・感想・評価

バルタザールどこへ行く(1964年製作の映画)
3.8
【地獄は何処に】

最初、タルコフスキーの『ノスタルジア』経由でロベール・ブレッソンの存在を知った私は初めて本作を観た時にあまりの演出の淡白さとアッサリした内容に面食らった記憶がある。まだ10代半ばだったから早過ぎたのだろうか?

これから公開されるイェジ・スコリモフスキの新作『EO』も楽しみだが、ロバさんの視点を借りて人間の業や世界の不条理を冷徹に描写する監督の先見性はさすがにヨーロッパならではのものだと思う。

後半強姦される娘役のアンヌ・ヴィアゼムスキーがあまりに可哀想。画面の強度では『ラルジャン』の方に軍配が上がると思うが、こちらも観るに値する実に思慮深いテーマを持った作品。当時フランスで流行ったスタイル重視(ジル・ドゥルーズの表層批評)の影響も僅かながらあるんだろう。
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