愛人との間に生まれた三人の子を押し付けられたので、家から追いやり、殺しを図る。その葛藤の描き方が良い。
おそらく伊豆あたりで殺す予定だったが、下車する勇気がなく乗り越し清算をする。東尋坊へ行くも突き落とす勇気がなく、奥へ奥へと能登まで行く。
首を絞めたり、刺したりと直接的に肉体を痛めつけて殺すことは小心者の父親にはできない。
随所に垣間見える心の揺らぎと、親子の血縁の重さを描く。
東京タワーにおいて行った娘と、エレベーターの扉が閉まる直前に目が合うこと。
崖から落とした息子と対面するも「父親じゃない」と言われてしまうこと。
親子の関係のまま関係が消滅することよりも、親子の関係を切られることの方があの父親にはショックだったのだろう。
お天道様のもとで生きれんだろ。