Sari

夕なぎのSariのレビュー・感想・評価

夕なぎ(1972年製作の映画)
3.7
クロード・ソーテ監督の代表作。
全く異なるタイプのふたりの男に愛される女の三角関係を描くラブ・ストーリー。

幼い娘と共に解体業者のセザール(イヴ・モンタン)の元に転がり込んだロザリー(ロミー・シュナイダー)。エネルギッシュで明るいセザールとの生活は楽しいが、ある日、5年前から姿を消したロザリーのかつての恋人ダヴィッド(サミー・フレイ)と再会してしまうが...。

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今作は、『突然炎のごとく』などヌーヴェル・ヴァーグを象徴する王道的な男女の奇妙な三角関係を描く大人の恋愛映画である。

3人の中で最もヒステリックなのが、一番の年長者であるイヴ・モンタン演じるセザール。直情型で、ある意味でどうしようもない人間味溢れる人柄をモンタンが生き生きと演じており、役柄に対する嫌悪を感じさせない。

ロザリーの元彼であるダヴィッド役で出ているのがサミー・フレイ。
俳優としての出演作では、ゴダールの『はなればなれに』(三角関係の引用元であろう)くらいしか印象のないサミー・フレイであるが、今作ではバンド・デシネ作家で自分勝手で皮肉な役柄のため、あまり感情移入できないキャラクターである。そんな役柄のせいもあるが、人間味あるモンタンの方に共感してしまう。

ヒロインのロミー・シュナイダーは、言うまでもなく美しい女優だが、冷たさよりも、どこか温かさを感じさせる女優である。
これみよがしの芸術性や作家性は感じないが人間描写がとても繊細なクロード・ソーテの作風との相性も良く、役柄にも合っている。
それでいて、シングルマザーという自立した強い女性のイメージを演じることにも成功しており、当時としてはとても新鮮に映ったのではないだろうか。

シアーなドレスにフェミニンなシャツ、トレンチコートといったイヴ・サンローランの衣装が、神秘的でいて自由なロミーの魅力をさらに際立たせている。

どこか聞き覚えのあるナレーションはミシェル・ピコリによるものだとエンドロールで気付いた。

2023/10/20 U-NEXT
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