むぅ

5つの銅貨のむぅのレビュー・感想・評価

5つの銅貨(1959年製作の映画)
4.1
大切な誰かのために
何かを諦めること
何かを諦めないこと

どちらも凄いと思う。
どちらも強いと思う。


「やだぁ、港かと思ったの!船の汽笛の音が聞こえたから」
そうキャッキャ言い放って、天然の母が私の部屋の扉を開けて閉めた。
小6の娘が一生懸命フルートを練習しているのに、である。
(ババア!!)
言いはしなかったが、そう思った。そして、確かにとも思った。
別にそれが原因なわけではないが、船の汽笛よりは奏でられるようになった頃辞めてしまった。
映画で楽しそうに楽器を演奏するシーンが出てくると、もっと頑張っとけば良かったかなと思ったりする。

実在のコルネット奏者レッド・ニコルズの奇跡のカムバックを軸としながら家族の愛を描く。
"5つの銅貨"は彼のバンド名。

レストランでレッドから新アレンジの楽譜を渡された際、気のりしない様子の5つの銅貨のメンバー。でも自分のパートを口ずさんで確認するうちに、セッションが始まる。
ルイ・アームストロングが本人役で登場しており、至る所に演奏シーンがあって本当に心躍るのだが、このシーンが一番好きだった。彼らのまわりに音符が、そしてそれがどんどんカラフルになっていくような楽しく素敵なシーン。そして最高に羨ましい。
タイムマシンがあれば、この映画を小6の私に観せに行きたい。
頑張ればこんなん出来るようになるかもよ、と。

父として、夫として
母として、妻として
そして娘として。
そしてコルネット奏者として。
それぞれの関係がメロディーが流れるように描かれるのも良い。

「家族の誰かがしんどい思いをするのなら、その選択を考え直す必要があるんじゃないかな」
わりと最近観ていたドラマでそんな言葉に出会った。
それを言ったのは夫、しんどい思いをしていたのは妻、その選択は娘に関わる事だった。
何だか凄く良いなぁと思った。
そして反省もした。
しんどい思いをしているのが娘で、選択肢が変わるのが親だったら、私はきっと聞き流してしまったと思う。
親子関係って特別なものだと思うけれど、家族の一員同士という関係が良いなと思った。
私ももし親が何かに迷う事があれば、私のことは気にせずに意思決定してもらいたいとも思った。

娘のドロシーの言葉。
「私ずっとお礼を言ってなかったわね」
その言葉でレッドの気持ちの変化が起こる。メロディーが変わる。
誰かの背中を押す力のある言葉って凄い。
親孝行の"お"の字も実行してない身としては、まだ少女であるドロシーに足を向けて寝れないなと思った。
そして両親にも足を向けて寝れないよな、と思った。
結局寝返りを打って、いつも通り寝た。でもちょっと微笑みながら寝返りを打ってしまうくらい温かいラストシーン。

汽笛の音と言いやがった事を全く覚えていない件についても忘れてあげよう。
むぅ

むぅ