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雨の中の兵隊のotomisanのレビュー・感想・評価

雨の中の兵隊(1963年製作の映画)
3.2
 厄介な映画だ。つい、なにが面白い?と思ってしまうんだが、却っておもしろき事もなき世(軍役)をおもしろく生きたい曹長と軍曹の悪だくみ補給廠日記にしたかったのかとか想像した。ところが何とも淀みが多くていけない。
 ベトナム戦前夜の陸軍、お偉いさんらは核戦略で頭がいっぱいな分スーダラ兵士が補給廠で怪しげな事をやっているらしい。それをクソヤローなMPが得点稼ぎに鵜の目鷹の目で見張っていて最早思うに任せない。だから満期除隊でさっさと娑婆に繰り出しておいら(軍曹)とあんた(曹長)でドンと稼ごうぜ、と云うのが希望らしいが、当の曹長は娑婆の風がコワいと抜かす。冴えないいじめられっ子でぶちん曹長ならもっともだが、だからって陸軍で羽が伸びるのかい?まあいいけど、励ますように軍曹が繰り出す珍儲け話の珍妙がどうも空振っていけない。法廷パートのドタバタなんかもそうだが、スタンダップコメディで生っぽい出任せ感の無茶を繰り出す分にはいいのかもしれないが、でき上った芝居の中ではどうもね、イキがよくない。おかげで中だるみどころか、どてっぱらがつっかえて一向に除隊に至らない。
 それでも果たして曹長、頭が空っぽな女の子と親子ほどの年の差なんて愛で乗り越えちまうし、バスタードなMP共も叩きのめしてやっと本領発揮かと思ったら、思わぬ形で除隊を迎えるんだなあ。変な話かもしれんがその最後20分だけ華だった。かつて9割私物だろうという感じの曹長オフィスが片付いてペプシの自販機と備品の椅子だけ残る中、兵役の更改サインを終えた軍曹が自販を叩くと役務解除のくせにやっと奢る気になったかペプシが出て来るではないか。旧曹長席に座って横を向けば、なんだかこっちもこんな話が本当にあったのじゃないかという気がしてきたのが不思議であった。

 複雑な事情の結果、スコア:+4-0.8
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