松井の天井直撃ホームラン

西陣の姉妹の松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

西陣の姉妹(1952年製作の映画)
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※ ☆☆☆☆★

日本映画栄光の1952年〜1954年。
この時代が如何に凄かったかかはこの作品がキネ旬ベストテン入りを逃している事実が物語っている。今ならベストワン確実だろう。

この映画の素晴らしさは新藤兼人の脚本に尽きる。時代に取り残され没落して行く西陣の織元を「これでもか!」とばかりに情け容赦無く叩き潰して行く。

そしてその脚本を、富裕層や貴族社会。更には当時の社会情勢等を対象として、とことん没落して行く人達を慈しみながら描くのは。新藤兼人の盟友でもある、名匠吉村公三郎が得意としていた所もあり。その演出力の冴えを堪能する喜びにも溢れる一品でもある。

没落の限り落ちてしまう登場人物には、東山千栄子の女主人と3人姉妹に。夫の妾で、元芸姑の田中絹代がひっそりと支援する慎ましさ。
宇野重吉の番頭を初め織元の仕事で生活している庶民の暮らしぶり。
菅井一郎の悪徳高利貸しは絶品中の絶品だが、進藤栄太郎の偽善者振りも絶品です。

あまりの悲惨な物語は新藤兼人の師匠である溝口健二の名作『西鶴一代女』と同じ年に製作された事に驚く。
『西鶴一代女』にはとことん堕ちて行きながらもどことなく希望の光に満ちた崇高な作品だったのに比べて、この作品にはラストシーンに象徴される様に、それが見いだせ無いのが多少残念ながらも傑作である事には間違い無いところでしよう。


劇場鑑賞 劇場名・日時不明(新・文芸坐?)



※ 嗚呼!自分は『西鶴一代女』といい、とにかく堕ちるところまでとことん堕ちて行く映画が堪らなく好きなんだなあ〜と💦