円柱野郎

明日への遺言の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

明日への遺言(2007年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

岡田中将という人物を、俺はこの映画で取り上げられるまで知らなかった。
罪状は名古屋大空襲の時に捕獲した米兵を略式手続きで処刑(斬首)した罪。
彼は斬首を実行した部下には罪が無く、上官として命令した自分に全ての責任があると言い、そしてその裁判上で米軍の無差別爆撃こそ非人道的行為ではないかと主張する。
普通ならこんな主張は取り上げてももらえないのだろうが、この裁判では違っていた。

“法戦”の覚悟で戦う中将の信念たるや、責任逃れに腐心する指導者達には微塵もない素晴らしい決意だと思う。
中将を弁護する米国人弁護士の姿勢も良し、彼の覚悟に触れた裁判官や検事も中将に助け船を出す。
結局中将はその助け船に乗らないけど、裁く者・裁かれる者という立場にあって、そういった不思議な関係は興味深くもあり戦争の不幸の一面でもあるんだなあと思ったね。
こういう人物がいたことを忘れたらダメですね。

ストーリー展開は冒頭から裁判シーンを淡々と進めるので地味。
しかしそからは静かな力が伝わってくる気がする。
藤田まことの演技が良いんだろうね。
「無差別爆撃を指示したのは誰か知っているか?」と訊かれた中将が、壁に掛かっているトルーマンの写真をチラッと見て、「…知りません」と答えるシーンが好きです。

ただ、演出面では時折挿入されるナレーションはちょっと状況説明臭すぎて今ひとつ。
一連の演出の中身に入れられなかったものか…?
竹野内豊(ナレーション)の読み方ももうひとつだった。
円柱野郎

円柱野郎