映画おじいさん

どっこい生きてるの映画おじいさんのレビュー・感想・評価

どっこい生きてる(1951年製作の映画)
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こいつ酔っ払ってカンパの金を無くすぞ〜と思ったら見事に無くし、このまんまじゃ一家心中だな〜と思ったらその方向へ(←決して口には出さない)…。
主人公を自業自得と見るか、共感し難いけど我々のように弱い人間と見るかで映画が大きく変わるはず。私はもちろん後者。恩知らずのように見えてもあのギリギリでは仕方ないと思ってあげたい。
たまたま昨日観た『悲しき瞳』の主人公(日守新一)とは似て非なる状況で、こちらは同情したいけどあちらは同情の余地無し。

アル中ババアの飯田蝶子の怒りの演技が素晴らしく、それをアップでとらえるカメラも最高の仕事。

チンドン屋をやっているという木村功の嫁(岸旗江)が不要なほど綺麗なのに物語に全く関係しないのはサービスカットということなんですかね?

イタリアンネオリアリズモの傑作『自転車泥棒』の影響を受けた作品とされていて、悲惨な貧乏っぷりはひけをとらないけど、決定的な違いを感じた。

それは本作では子供は子供で極端に言えば人格さえもないところ。一家心中まで追い詰められているのに。子供が考えていることを敢えて描かない、という風には見えなかったので何だかモヤモヤが残った。

なので子供の視点が胸を突き刺すような『自転車泥棒』とは似て非なる映画だと私は思いました。

職安に群がるモブシーンをとらえたラストショットは彼ら一人ひとりに同じような物語があるのだというのが伝わってジーンというか正直ドヨーンでした…。