三四郎

薔薇合戦の三四郎のレビュー・感想・評価

薔薇合戦(1950年製作の映画)
3.3
次女の大人しい若山セツ子が、長女の女社長三宅邦子に初めて自分の意見を言い歯向かう場面、ここの科白が、女を描くのが長けている成瀬巳喜男監督がこの作品で一番描きたかったところじゃないかしら。
三宅邦子が会社を第一に考え、若山セツ子を日夏という社員と結婚させといて、その結婚生活が日夏のせいで破綻し、会社にとっても無用の存在となると、さっさと別れれば良いと言う。若山セツ子は、別れるにせよ、最後に日夏に会って話し合って決めると言う。
三宅「じゃあ、まだあんな男に未練があるのね」
若山「あんな男と結婚させたの、どなたです?
…以前の私は、姉さんの言い付け通り右を向けと言われたら一日中でも右を向いてました。でも今では、どうせ向くにしても、自分というものを可哀想に思うだけ欲が出てきたんです。
日夏と一緒になってから、色んな悲しい目に遭いました。でもそんなこともういいんです。ただ同じ別れるにしても、別れた後の日夏のことも考えてやりたいんです。山下さんと愛し合っているなら、二人とも幸福にしてあげたいんです」

優しくて大人しい引っ込み思案な次女若山セツ子が、結婚後、色々あり、これほどまでに、自分の意見を毅然とした態度で言えるようになるとは…女は強いものだと思う。
いや、内に秘めたものがある人ほど、実は自主自律の精神があるものなのかもしれない。そして誰よりも頑ななのかもしれない。

三女の桂木洋子は、最初は自主自律を体現しているように見えるが、浅はかで、実は脆い。
長女と三女は強く見えても、人を頼らなければ生きてゆけないのだ。

三人姉妹を上手く描いた映画だ。
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